画像出典:Aerones wind turbine cleaning drone + interview、以下同じ
もくじ
風力発電のタービンはメンテナンスが大変
そこで産業用ドローンの出番です
風の力で巨大なタービンを回して電気をつくる風力発電は火力発電などに比べると二酸化炭素の排出が圧倒的に少ないクリーンなエネルギー。ヨーロッパなど開発が進んでおり、洋上風車を中心に建設台数が増えています。現在の「大型風車」は8メガワットクラスで、サイズ感は東京都庁くらい。それが今後は10メガワットクラスの「超大型」風車が登場し東京タワーに迫るサイズとなるタービンの建設が始まるそうです。
そこで重要になってくるのがメンテナンスの方法。300mクラスの風車となれば、先端までクレーンを伸ばすのはほぼ不可能で、人がぶらさがって検査をするにも突風などにあおられた際の事故などが懸念されます。そのため、ドローンによる点検やメンテナンスが注目されており、今回ご紹介する機体もそういった需要を狙って開発されたもの。
この機体はAERONES(エアロネス)というラトビア発のベンチャー企業が開発をしています。同社の説明によれば、このドローンは100mの高さに2秒で到達でき、クリーニングや凍結帽子の液体を高圧で噴射できるとのこと。
有線で電力や噴射用の液体を供給し、予備バッテリーによる断線対策や28機のモーターによる冗長化、3つのパラシュートによる安全性の確保などの機能を備えています。
ちなみに、同社が開発しているこのドローンは「世界初のドローンからのベースジャンプ」動画として、『ビバ! ドローン』で過去に紹介しているものと同型です。
動画で見る風力発電タービン
メンテナンス用産業ドローン
Aerones wind turbine cleaning drone + interview
実際にこのドローンが飛行しながら凍結したタービンの除雪除氷をしている様子はこちらの動画でご覧いただけます。
動画の冒頭に表示される「AERONES」のロゴ。映像制作のセンスも高めです。
「風力タービンの除氷」というド直球の説明。
地上で液体の噴射テストを行なうドローン。機体にタンクを積んでいるのではなく、地上にある高圧ポンプから液体を供給しており、水、お湯、不凍液などを用途に応じて噴射できます。
空高く舞い上がるドローン。
タービンに向かって液体を噴射しています。
噴射の様子を近くで見るとこんな感じ。
ドローンに搭載したカメラでリアルタイムに作業状況を確認できます。
作業が終わり地上に戻るドローン。画像右端に見えるのは、地上のオペレーションセンターとなるテントです。
動画の後半にはJanis Putermas(ジャニス・プターマス)CEOのコメントが収録されています。
プターマスCEOのコメント要旨は下記の通り。
- ドローンは200kgの重量を持ち上げられる
- ドローンは電力用ケーブルと液体ホースで地上と繋がっている
- 地上設備はトラックやトレーラーに搭載可能
- 将来的にはリモート拠点からドローンを自動操縦するようにしたい
- 安全性確保のため冗長化を徹底しており、シングルポイントは存在しない
- 電源ケーブルが切れてもドローンに搭載したバッテリーで安全に着陸できる
- この機体は風車のメンテナンスの他に、消防、人命救助などにも応用できる
編集後記
「風車のメンテナンス」という役割に特化することで、実用に足る可能性を強く感じさせる仕上がりになっている今回の機体は、風車が巨大化する中でクレーンや人がぶら下がっての点検やメンテがますます困難になる状況を解決するナイスアイディアです。洋上風車を中心とする風力発電施設の増加トレンドに乗れば、かなり有望なビジネスに育つことが期待できそうです。