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アーバン・エア・モビリティ(UAM)とは?実現までの過程や障壁も紹介

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小型の電動垂直離着陸機(eVTOL)の実用性の高まりとともに、現実のものとなりつつあるのが「アーバン・エア・モビリティ(Urban air mobility)」、通称UAMという技術です。近年注目を集めるこのワードですが、具体的にどういったものなのでしょうか。

この記事では、アーバン・エア・モビリティ(UAM)の概要や実現に向けた取り組み、現在の課題などについてご紹介します。

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アーバン・エア・モビリティ(UAM)とは?

「アーバン・エア・モビリティ(Urban air mobility)」とは、人や物を使って輸送する都市交通システムのことです。まずはUAMの特徴や歴史、実現の具体例ついてみていきましょう。

UAMの特徴

出典:https://www.airbus.com/en/urbanairmobility/cityairbus-nextgen/cityairbus-demonstrator

アーバン・エア・モビリティ(UAM)は「新・都市交通システム」とも称され、都市や郊外で乗客や荷物を運ぶシステムやサービスと定義されています。人口が集中する都市圏において、渋滞や混雑を回避して陸路を効率よく移動する手段として注目を集め、スマートシティ構想に不可欠な要素の一つとして本格的な研究開発がなされてきました。

平面の地上では道路網を拡充するために莫大な費用が発生しますが、立体で通行できる空は管制によって効率的な利用が可能になります。こうした効率性の高さやインフラに依存しない交通ネットワークの実現は、UAMならではの利点です。

UAMの歴史

UAMの概念そのものは、元を辿ると1946年頃に「空飛ぶクルマ」として考案・設計が進められてきた構想が発祥です。

その後もベンチャー企業を中心に開発が進められ、今なお様々な種類の開発がしのぎを削っています。また、ベンチャー企業のみならず、大手航空機メーカーであるBoeing社やAirbus社、米国政府や米軍などでもUAM関連プロジェクトが実施されてきました。

出典:https://commaris.com/

なお、直近では米国のTerrafugia社・スロバキアのAeromobil社が、翼を備えた機体の開発を進めています。

ここ10数年前後の詳細な動きに関しては、2015年頃に機体の開発から運用まで行うベンチャー企業が次々に登場し、ドイツのハンブルクでは2017年5月~2018年1月までの間に、都市圏でのドローンの使用が実施される「WiNDroVe project」が開催されました。

2018年6月には、インゴルシュタットでアウディ・エアバス・カリスマ研究センター・Fraunhofer Application Center for Mobility・THI University of Applied Sciencesなどの他、パートナー会社が参加するアーバン・エア・エアモビリティプロジェクトも開始されました。

さらに近年では、気候変動による環境対策の必要性が大きく高まった影響で、自動車業界や航空業界からも参入が増えています。幅広い業界からの投資が加速し、追い風となっているのです。

UAMの具体例

出典:https://www.aircharter.jp/private-charter/air-taxi

UAMの実現における具体例として、小型無人操縦機の宅配サービスや、2~5人乗りの自動運転のVTOL機のエアメトロ・エアタクシーなどが挙げられます。オーダーに応じて周回ルートに沿って運行を行ったり、決められたルートを時刻表通りに運行したり、不規則なルートと時間に対応したりと、各用途に沿った仕様が想定されています。

活用できるサービスとしては、人の運搬や宅配サービス、ポスティングなど移動を伴う動作が中心です。

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UAM実現はいつ頃?

出典:https://www.expo2025.or.jp/

官民協議会では、「大阪万博2025」をベンチマークとしながら、次世代空モビリティの活用や整備・拡大を進めています。今後は大阪万博による次世代空モビリティのプレゼンスと社会受容性の高まりによって、2030年に向けたUAMの活用促進が加速していくと予想されています。

なお、メガシティと呼ばれるような大都市圏においての実証実験は未だ困難な状況ですが、周辺の人口が集中するエリアでは、都市間のハブとしてUAM活用の構想もみられます。

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UAM実現の障壁になる課題

出典:https://www.airbus.com/en/innovation/zero-emission/urban-air-mobility

都市型航空交通における未来の担い手として大きく期待されるUAMですが、取り組むべき課題もあります。ここからは、UAMの実現に向けた課題を5つご紹介します。

騒音

UAMは都市上空を頻繁に飛行することが想定されるため、騒音に関わるトラブルが懸念されています。特にこうした騒音は、上空から聞こえると通常よりも恐怖を感じやすくなります。そのため、UAMを実現するうえでは、慎重なルート設計や静音性を担保することが重要です。

また、最短ルートで静かに飛行するためには、各機体の開発やデザインの工夫も欠かせません。

安全性

UAMが本格的に展開された場合、多くの機体が低高度で空を利用することになるため、ルートやエリアを限定するなど、ある程度の枠組みを設けることが安全性を重視するうえでは重要です。

それに加えて、飛行性能を踏まえて飛行気象条件を明確にしたり、混雑時における離着陸の航空交通管理手法を取り決めたりすることなども、安全性を担保するうえではキーポイントになるでしょう。

法の整備

UAMを実現させるためには、関連する法規制や設計基準(耐空性)のルール策定も求められます。

UAMは航空機に分類されるため、機体の安全性をシカゴ条約に則って国が保証する「耐空証明」が必要です。なお、耐空証明は「落ちないこと」を政府が確認・保証しなければならず、耐空証明がない航空機は営業用として運用できません。

このように、UAMには既存旅客機並みの安全性が要求されるため、現在は機体開発と並行して着々とルール作りが進められています。

装備の向上

UAMの装備向上のためには、以下のように「eVTOL」に特化した装備要件の明確化を確実に達成する必要があります。「eVTOL」とは、ヘリコプター・ドローン・小型飛行機といった特徴を併せ持つ、垂直な離着陸が可能な電動の機体のことを指します。

  • eVTOLの姿勢・高度・位置・または計器を測定するための装置(姿勢指示器や方向指示器、精密高度計、無線電話、飛行記録装置や操縦室用音声記録装置)
  • 水上を飛行する場合における緊急着陸用の救急用具などの装備(救命胴衣や緊急用フロート)
  • その他、バッテリーに対応した必要搭載燃料の基準の制定(不測の事態を考慮した追加バッテリー量など)

操縦者の技能証明

耐空証明を取得した航空機に第三者を乗せて操縦するパイロットは、国が設定した操縦技能を有していなければなりません。操縦方法は航空法で規定されており、地形・地上の目標物などを頼りに目視で操縦する有視界飛行、管制官の指示で機上の高度計や速度計をもとに飛行する計器飛行が考えられています。

ちなみに、近未来のUAMはライセンスを所有した操縦者が搭乗し、有視界飛行で運用する線が濃厚とされています。この場合、操縦者の技能証明要件も当該ユースケースを前提に検討されているほか、荷物輸送に関しては遠隔操縦なども考慮されています。

ただし、遠隔操縦における整備者の要件として、他の航空機には搭載されていないシステムの知見・経験が必須となる可能性もあります。実現に向けてはどのような知見・経験が必須となるか、といった条件を明確にする必要があるでしょう。

編集後記

今回はアーバン・エア・モビリティ(UAM)をテーマにご紹介してきました。

近未来都市の新しい交通手段として、実現に向けて着実に一歩を踏み出しています。官民を挙げてあらゆる国々での研究・開発が進められていますが、実用化にあたっては課題も多く残されています。UAMの実現には既存の航空規制や交通規則をベースにしつつ、新たな発想が必要となるでしょう。

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2022.11.07