画像出典:Meet SwarmDiver – Micro Diving USV for Ocean Swarming、以下同じ
もくじ
群れで泳ぐ水中ドローンSwarmDiver
独自のアルゴリズムと複数機体間のワイヤレス通信に基づいた「群泳」が可能で、GPSを頼りにした集団自動航行をしながら水深50メートルから波打ち際まで多彩な場所で行動が可能な水中ドローンが『SwarmDiver(スワームダイバー)』です。これまでは、ダイバーが潜行するか、潜水艦などで行くしかなかった場所へ、同時に複数台のドローンを送り込むことで、一定数が破損したり撃墜されても任務を完遂できることを強みとし、1名のオペレーターが無数の水中ドローンを操ることで少人数で精密な情報収集や偵察を可能にします。ちなみに「Swarm」とは「群れ」という意味の単語なので、『SwarmDiver』を訳すと「群れなす潜行者」という感じになります。
水中ドローンSwarmDiverのスペック
『SwarmDiver』の全長は75cmで、重量は1.7kg。2つのモーターとスクリューを備え、最速4.3ノット(秒速2.2m)での移動が可能。航続距離は最長7kmでバッテリー駆動時間は2時間30分です。単体で作動する水中ドローンに比べて、複数台で活動する『SwarmDiver』はより素速く広い海上や海底の情報収集ができ、攻撃を受けた場合でも全機が破壊される前に必要な情報を集めきり、無線通信でデータを送信し終えるといった運用に対応します。
画像出典:Aquabotix
群れなす潜行者『SwarmDiver』の狙い
『SwarmDiver』の用途として想定される項目は以下の通り。
- 海洋調査:海底の砂などを採取する。海洋学や水産養殖の研究への活用を想定。
- 水路測量:水深等を測り、海底地形などを把握する。
- 軍事関連:偵察を行ない、機雷や敵の船のデータを収集する。
なお、センサーの代わりに爆薬を搭載できるかは明らかにされていませんが、「自律航行型の機械水雷」もしくは「水中ミサイル」としても使うことも技術的には可能。いかに小型とは言え、この数のドローンで殺到すれば防ぎ切られる可能性は低く、スクリューなどを狙い撃ちして大型船すら行動不能に追い込めそうです。
SwarmDiverの公式紹介ムービー
『SwarmDiver』を展開するには、船の上からポイポイと海に投げ込むだけでOK。
可動部品を減らし、ゴム製のパーツなどを採用することで強度を高めた機体は波打ち際でも運用可能。
50m下の海底まで垂直に潜水できます。
フォーメーションを組んで航行しながら、収集したデータをリアルタイムにワイヤレス通信で転送可能。
『SwarmDiver』の開発元Aquabotix社はアメリカ海軍への納入実績のあるメーカーで、同機体も軍事偵察用を想定した開発が行われています。
ミッションを終えた『SwarmDiver』は船のそばまで自動で戻ってくるので、フックのついた棒で船上に引き上げるだけで回収できます。
実際に、同機が水中で活動する様子はこちらの動画(キャプションは英語)でご覧ください。
Meet SwarmDiver – Micro Diving USV for Ocean Swarming
編集後記
防御側の処理(防衛)能力の限界を超えた物量で攻撃を加える飽和攻撃をするには、開発に高度な技術が必要で高価なミサイルなどのハイテク兵器が必要でしたが、ドローンの登場で、その「ルール」が覆りつつあります。安価で自動航行が可能、小型で検知も難しく改造も容易な機体が空に、そして海へ活動の場所を広げつつある現代においては、『SwarmDiver』のように群れをなして行動するドローンが攻撃に用いられる日もそう遠くないはずです。
既にロシアは中型の水中用ドローンに核弾頭を搭載した兵器の開発を進めていると発表しており、これがさらに小型化され群れをなすようになれば回避はほぼ不可能。『ドローン』の時代が『ミサイルの時代』を超える軍拡競争を招く恐れも、完全な杞憂とは言い難い状況になりつつあります。