ドローンメーカーと言えばDJIが真っ先に挙がるように、ドローンメーカーとして有名な企業は日本以外であることがほとんどです。
しかし、近年では日本国内でもドローンの開発を進めるメーカーが増え続けており、一般の方でも利用できる小型ドローンも開発されています。今回はその中でも一般・企業・自治体を問わずさまざまな用途で活用されている、株式会社ACSL(エーシーエスエル)が開発した国産小型ドローン「SOTEN(蒼天)」について解説します!
現役ドローンパイロット&ライターとして活動中 / Mini2・Phantom4 Pro+ V.2.0の2台を所有 / DJI CAMP スペシャリスト・ドローン検定3級・UAS Level2取得済 / 執筆のご相談はこちらから
<おすすめ記事>
・Skydioとは?橋梁点検や警備などで活躍する米国製ドローンの魅力を解説します!
・【ドローンパイロット監修】ドローンのリモートIDとは?おすすめ商品もご紹介!
・2022年最新!ドローンに関する航空法改正の概要や変更点を解説【前編】
・2022年最新!ドローン航空法改正を解説【後編】【操縦ライセンス】
・ドローンの機体登録制度が2022年6月から義務化!徹底解説します【事前受付開始中】
もくじ
国産ドローン「SOTEN(蒼天)」とは?
SOTENは公募事業「安全安心なドローンの基盤技術開発」事業のもとで、ACSL、NTTドコモ、ザクティ、先端力学シミュレーション研究所、ヤマハ発動機の5社が共同で技術開発が進められたドローンであり、2021年12月7日に発表されました。
小型ドローンと言っても機体自体は1,720gと重めであり、DJI Mavic 3が2つ分くらいの重量です。ただし折り畳んで収納ができるドローンであるため、携帯性に優れています。
国産ドローン「SOTEN(蒼天)」が注目されている理由

出典:https://product.acsl.co.jp/product/post-369/
SOTENが注目されている理由の1つは、国内で開発されているドローンの中でも特に情報セキュリティ対策が充実しているからです。
近年、国内だけではなく世界各地のドローン業界で中国製ドローンの利用を削減すべきという考えが広まっているのをご存じでしょうか?
2017年に中国で新しく「国家情報法」という法律が制定されたのですが、この法律は中国政府が中国にある全ての企業・組織に政府への情報提供を求める法律です。要するに、中国製ドローンの使用は気付かぬ間に情報漏洩が起きてしまう可能性が高いと認識して頂ければよいでしょう。
中国製ドローンの使用規制・禁止の国がアメリカを始めとする世界中で増えており、2020年には日本政府としても情報漏洩等のリスクを懸念している方針を示しています。
日本国内で今後も展開されていく測量・災害支援・物流とさまざまな情報を扱う機会が増えていく中、中国製ドローンを使用することは、データの無断閲覧や意図的な操縦トラブルが発生するリスクが高いというのが現状です。例えば原子力発電所をドローンで点検している際に操縦を乗っ取られてしまい事故が発生したら、大問題になります。例えばの話ではあるものの、可能性がゼロではない以上きちんと事前に対策を行わなければいけません。
また、地方自治体でもドローンによる災害支援や点検、測量が導入され始めていることを考えると、これらの情報が漏洩することは国防面においてもリスクが高まります。
SOTENはACSL、NTTドコモ、ザクティ、先端力学シミュレーション研究所、ヤマハ発動機の5社が中国製ドローンの難点である情報漏洩・情報セキュリティを強化するために共同開発した機体であり、使用するメインパーツは完全国産品ないしは信頼のおける海外品を使用している機体です。
セキュリティ強度はコンピュータセキュリティのための国際規格であるISO 15408に基づいており、データ漏洩や抜き取りを防止、機体乗っ取りへの耐性、通信・撮影データの暗号化を実現したセキュリティに優れる機体であるため、日本国内を始めとして各国でも注目されています。
国産ドローン「SOTEN(蒼天)」の特徴
SOTENの最大の特徴は強固なセキュリティ対策ですが、SOTENの特徴はそれだけではありません。具体的に、SOTENが測量・点検・空撮とさまざまな実践で活躍する特徴をご紹介します。
マルチな用途に対応できるワンタッチカメラ

出典:https://product.acsl.co.jp/product/post-369/
SOTENは標準カメラとして2000万画素の4K撮影に対応した可視カメラが搭載されていますが、オプションカメラとして赤外線カメラ+可視カメラ、光学ズームカメラ、マルチスペクトルカメラの3種類が用意されています。
例えばDJIの赤外線カメラ「DJI Zenmuse XT2」は機体に設置する上で少し手間がかかりますが、SOTENはカメラをワンタッチで切り替えることができるため、オプションカメラさえ用意しておけば多用な撮影方法を手軽に実現可能です。
標準カメラは空撮はもちろん測量用の低ノイズ高画質撮影にも利用でき、光学ズームカメラでは発電所のリモート点検のように点検用ドローンとしても活用できます。また、災害支援などを行う地方自治体や行政団体は赤外線カメラ+可視カメラを利用することで、昼夜を問わずさまざまな災害支援活動にも貢献します。
災害支援用ドローン単独で購入すると活用する機会が少ないという声を耳にしますが、SOTENであればカメラを切り替えるだけで各部署の使用用途に合わせて利用できるため、コストパフォーマンスとしても申し分ない機体でしょう。
LTE通信を活用した状況を選ばずに済む飛行

出典:https://product.acsl.co.jp/product/post-369/
一般的なドローンはドローン本体と送信機(プロポ)間での直接通信やWi-Fi通信を利用して飛行させますが、広範囲・長距離での飛行では不安定になったり通信が途絶えたりしてしまいます。そのため、レベル3またはレベル4飛行を実現する上では従来の通信方式での飛行は不十分でした。
SOTENで利用できるLTE通信を活用した飛行は、従来の通信方式では実現が難しい広範囲・長距離でのドローン飛行を実現させる技術です。機体にSIMを挿入して行うLTE通信を活用することで、SOTENはインターネットを経由して操縦できます。このため、GNSSが入りづらかったり、長距離飛行になってしまったりする山間部やプラント内部のような場所でも、SOTENはレベル3飛行に該当する「自動飛行により補助者無し目視外飛行」を実現できる機体です。
国産ドローン「SOTEN(蒼天)」の基本スペック
項目 | 詳細 |
寸法 | アーム展開時:637mm×560mm(プロペラ含む)
アーム収納時:162mm×363mm |
機体重量 | 1,720g(標準カメラ・バッテリー含む) |
最大離陸重量 | 2,000g |
最大飛行時間 | 標準カメラ搭載時、風速8m/s条件下:25分
標準カメラ非搭載時、風速8m/s条件下:29分 |
最大伝送距離
(障害物や電波干渉がない場合) |
4km |
最大上昇速度 | 3m/s |
最大下降速度 | 2m/s |
最大飛行速度(無風時) | 15m/s |
動作環境温度 | 0~40℃ |
運用限界高度 | 2000m |
防塵・防水性 | IP43(カメラ、ジンバル、バッテリー搭載時) |
【ビジョンシステム】障害物検知範囲 | 前方:10m / 上方:5m / 下方:5m |
【赤外線センサ】障害物検知範囲 | 上方:2m / 下方:12m |
標準カメラ | 動画4K対応 静止画時2,000万画素 |
【標準カメラ】動画撮影画質 | |
オプションカメラ | 赤外線カメラ+可視カメラ / マルチスペクトルカメラ
光学ズームカメラ |
リモートID | Bluetooth |
GNSS | GPS+QZSS(準天頂衛星みちびき)+SLAS/SBAS |
クラウド | 撮影画像・動画保管機能 / フライトログ保管機能 |
セキュリティ対策 | フライトログ・撮影データ漏洩防止
通信の暗号化 / 機体と送信機のペアリング |
OS | Android™ 11 |
機能 | 自動飛行 / 画像トラッキング
3方向センサによる衝突回避 |
機体制御プロトコル | MAVLink準拠 |
付属品 | 標準送信機 / バッテリー(94Wh)
標準充電器 セキュアフライトマネジメントクラウド※(3年分、5GB) |
オプション品 | スマートコントローラー / 送信機フード
予備プロペラ / 教習送信機 プロペラガード / LTE通信モジュール 収納ケース(ハード) / 予備バッテリー(94Wh) 収納ケース(ソフト) / マルチマウント 3連充電器 / 上部カメラマウント(開発中) |
編集後記
今回は国産小型ドローンの中でも、特にセキュリティ対策面が優れているSOTEN(蒼天)についてご紹介しました。DJIのように中国製ドローンが沢山あるのに、何で今になって国産ドローンが注目されているのかと思ってた方も多いのではないでしょうか。中国製ドローンは手軽に入手できる反面、情報セキュリティ面では不安が残ります。点検・測量・災害支援・物流と用途を問わず、万が一を考えたら情報セキュリティは強固でなければいけません。今後各用途でドローンの利用を検討するのであれば、SOTENのように情報セキュリティ対策がバッチリなドローンを選ぶことをおすすめします。