地上からでは決して撮ることができない映像を撮影できるドローン。空撮映像をテレビやインターネットで見て「すごい!」「自分でやってみたい!」と思った方も少なくないと思いますが、実際に撮影してみようとすると、法律や規制についての知識や機材の選定、手持ちのカメラとは異なる撮影テクニックなど、知るべきことや練習しなければならないことが山積みで尻込みしてしまうのも事実。
そこで、この記事では初心者の方向けに、ドローン空撮でプロレベルの作品づくりを実現していくために、まず知るべき情報や知識をまとめてみることにしました。
ドローン空撮の基礎知識
【1】ドローン空撮とは?
ドローンとは、遠隔地からの操作や自動航行ができる「無人航空機」のことです。そして、このドローンにカメラを装着して、空中から写真や動画などを撮影することをドローン空撮と言います。
このドローン空撮にもさまざまな用途があり、例えば太陽光パネルや発電用風車の点検目的で行なう撮影もありますし、工事現場や田畑を測量するためにドローンのカメラを活用することもあります。さらには、海や山で遭難した人を探すためドローンに搭載したカメラを使ったり、対象の温度を計測する「サーマル・カメラ」を使ったりする特殊な空撮用途にドローンを利用するケースもあります。
このように「空撮」にもいろいろなバリエーションがありますが、この記事では風景の空撮や観光地のPR映像、YouTube動画などの映像作品を制作する際のベースになるような情報をご紹介していきます。
【2】ドローン空撮のメリット
ドローン空撮の最大のメリットは地上からでは捉えられない角度からの撮影ができることです。また、ヘリコプターや飛行機、気球などからの空撮と比べて比較的安価な機材のみで撮影ができることや、狭い場所からも離着陸が行える、といったメリットもあります。
一方で、マイナス面としては、航空法による制限で事前に国土交通省や空港事務所による承認を得なければ150メートル以上の空域を飛行できない、バッテリーの問題から、1回の飛行時間が30分程度と短いなどの点が挙げられます。
【3】ドローン空撮と法律とルール
日本国内でドローンを利用する場合は、おもに以下の5つの法律が関係します。
<ドローン利用時に関係する法律一覧>
- 航空法
- 小型無人機等飛行禁止法
- 道路交通法(第七十七条)
- 民法(第二百七条)
- 電波法
また、地域によっては条例により飛行が禁止、または制限されている場合があります。それぞれの詳細については、以下の記事に詳細がありますので、チェックしてみてください。
なお、人口集中地区など、飛行が制限されている場所でも、国土交通省へ事前に書類を提出して許可を受けることで飛行が可能になります。手続きの方法については、こちらの記事に解説がありますのでどうぞ!
【4】ドローン飛行の練習場所
屋内(室内)は航空法の規制対象外になるため、人口集中地区や夜間であってもドローンを飛ばす練習ができます。まずは、自宅を利用したり、施設管理者の許可を得た上で会議室や体育館などを利用することで手軽にフライト練習ができるので、ビギナー向けの飛行場所としておすすめです。なお、屋内で飛行する場合はドローンのローターを保護するためにプロペラガードを着用すると安心です。
東京から1時間で行ける無料ドローン練習場
東京や千葉にお住まいの方におすすめのドローン練習場の記事も公開していますので、屋外飛行をしてみたいという方は要チェック!
【5】空撮動画用の機材
空撮を目的としてドローンを購入する場合は、どのような機種を買うべきか? 必要なスペックと具体的な機種をご紹介します。
4K画質で撮るほうが良い
空撮映像を制作する場合にどこまで高い画質を求めればいいのでしょうか? このあたりは様々な考え方やスタンスがあります。例えば「現状もっとも多いユーザー環境にあわせるべき」という考え方もあるでしょう。しかし、インターネット上に公開した作品は何年か先にも見られ、その時代のスタンダードで評価されるという宿命があるため「画質のせいで古臭くみえてしまう」時期ができるだけ先になるほうが望ましいと言えるでしょう。
また、オンラインの動画視聴環境として最も普及している『YouTube』は、既に8K画質に対応しています。
なお、編集環境では『Final Cut Pro X』は4K、『Premire』は8Kでの動画書き出しに対応しています。
このような状況を踏まえると、少し先のスタンダードを見越して4Kで映像を作成するのがおすすめです。なお、フレームレート(1秒間のフレーム数)は、スポーツや車などの動きの速い被写体を撮影しない場合は、30fpsがあれば十分と言えるでしょう。
ブレと防ぐジンバルは必須
滑らかな空撮映像を撮影するためには、動画の解像度だけでなくブレを軽減するための仕組みがなくてはなりません。
ドローン本体に搭載したモータ−の振動や風の影響などを受け常に揺れているドローンにカメラを直付けしただけでは映像が「ガクガク、ブルブル」としてしまい、とても見られたものではありません。
撮影したデータにデジタル処理で手ぶれ補正をかける方法もありますが、これには限界があることから、ジンバル(スタビライザー)というブレを防ぐ専用のアームにカメラを取り付けるタイプのドローンを選ぶのがおすすめです。
ドローン空撮におすすめの機体
<Mavic 2Pro>
まるで一眼カメラのような高画質な映像が撮影できるプロ向けモデルのドローン。1080pの動画を最大5kmの距離で伝送できるため、空撮映像をスマホで遅延なく確認できます。
- 公称重量:約905グラム
- カメラ性能:4K撮影可能
- 参考価格:197,560円(税込)
<Phantom 4 Pro V2.0>
暗所撮影や階調表現に優れる1インチセンサーを備え、秒間60フレームの4K動画に対応した空撮ドローンの決定版。
- 公称重量:約1.38kg
- カメラ性能:4K撮影対応
- 参考価格:207,680円(税込)
<Inspire 2>
4K360°回転式ジンバルにマイクロ・フォーサーズセンサーを搭載したカメラ『ZENMUSE X5S』を搭載し、最大5.2Kでの動画撮影可能な空撮ドローンのハイエンドモデル。
- 公称重量:約3.44kg ※ジンバル、カメラ別
- カメラ性能:4K撮影対応 ※ZENMUSE X4S/X5S搭載時
- 参考価格:396,110円(税込)
上記の3モデルは「値段が高すぎる……」という場合はは、『DJI Mini2』もおすすめです。フライトアシストの性能がやや下がるものの撮影可能な解像度が4Kで、断然手頃な価格(参考価格:59,400円税込)で購入できるのが魅力です。
ドローン空撮
実戦テクニック
【6】 空撮のプロたちに学ぶ撮影のお手本
空からの視点で風景を再定義する
人間の視点を超越した真俯瞰からのショット。初めてみた瞬間には「何を見ているかわからない感覚」が立ちあがり、理解が追いつくにつれて風景の美しさが染み込んでくる作品。見るものの感覚をゆさぶり、視点を変えることで風景を再定義する構図選びが見事です。
工場夜景の壮大さを表現しきった名ショット
AKB48やGLAYが出演するミュージックビデオの空撮パートを撮影するなど実績を持つ株式会社ヘキサメディア。同社の公式YouTubeチャンネルで四日市市の工場夜景を空撮した映像が公開されています。みどころは動画中2:00頃からで、工場内を見下ろす角度へと高度を上げていくシーンが見どころで、メインとなるオブジェクトをど真ん中に配置し、タンクや煙突が山型に見えるポジションを維持しつつ、工場の奥行きが感じられる高度まで滑らかに上昇していくカメラワークが秀逸です。
空撮ならではの距離感で大地の奥行きを捉える
企業経営者、コンサルタント、そしてドローンレース解説に空撮ドローングラファーとマルチに活躍する大前創希氏の作品。発電用の巨大な風車が、陸と海の間に吸い込まれていく構図で北海道の大地の広大さと奥行きをストレート表現しています。
【7】 ユーチューバーに学ぶドローン活用法
国内ユーチューバー編
ドローンをテーマにテンポよく起承転結を見せる
空撮映像だけではなく、丁寧な商品撮りや開封動画、自撮り、移動中の様子など、バリエーション豊富なショットをテンポ良くつないでいるのが魅力。「ただ空撮を見せる」だけに終わらず「空撮(ドローン)」を手に入れて楽しむストーリーを飽きさせずに見せ切る構成と編集の旨さは、Vlog(Vdeo Blog/動画日記)のお手本と言えるつくりです。
旅の魅力を空撮で立体的に表現
いかにもハワイ! という空撮映像で観光気分を盛り上げてくれるVlog。ほのぼのとした世界観の中でドローンと空撮の楽しさをスッと伝える構成は、肩肘張らずともガジェットやテクノロジーを表現に取り込む事ができるという好例です。
海外ユーチューバー
個人YouTuberのイメージを覆す鬼才
ハリウッド映画かと見紛うばかりの圧倒的ハイクオリティ映像を制作するJR Alli。ダイナミックなカメラワークとスピーディーなトランジションの計算しつくされたコンビネーションとドローンショットが生むスリリングな映像はまさに圧巻というほかありません。一朝一夕にマネができるレベルではありませんが、個人クリエイターがここまでの映像を作り上げられる、という実例として必見です。ドローンショットは01:16頃から。
スタイリッシュなVLogと空撮の相性が抜群
特徴的なカラー・グレーディング(色補正)とクールな音楽にあわせたラフな展開が魅力のSam kolder(KOLD)作品。このアイスランドVlogは友人2名という少人数で制作した映像ながら、予算を注ぎ込んだTV番組すらも圧倒するレベルで見る人を引きつける作品に仕上がっています。04:13頃で見られる完璧というほかないドローンショットの構図に、彼らのフィルムメイカーとしてのレベルの高さを感じます。
<まとめ>プロレベルの空撮動画制作をめざすために
ドローン空撮を始める際に、まず必要なのは法律やルールを守って安全にドローンを運用するための知識です。インターネットなどでは破天荒な振る舞いが注目を集めることが少なくありませんが、それは一過性のもの。違法行為や迷惑なふるいまいをウリにするクリエイターは遅からず淘汰される運命にあります。
そして、知識と心構えがあれば、あとは、機材そろえて実戦経験を積むのみです。エッジの効いたクリエイターから学びたければ、上記の例以外にもYouTubeなどで無数の作品を見ることもできます。
ドローンを使った映像制作を始めるハードルはそれほど低いものではないかもしれませんが、10年前に空撮をすることを考えれば驚くほど容易になっています。何かを表現したい、という気持ちのある人は、ぜひ、ドローンを活かした映像制作にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?