もくじ
空から急行! 実用化が進む人命救助ドローン
人や車両がたどり着けない場所に空から到達し、人命救助にあたるドローンの開発が世界各地で進んでいます。オーストラリアでの世界初の人命救助成功例などを中心に、この記事ではドローンを使ったレスキュー技術を動画で見ていくことにしてみましょう。
【1】世界初! ドローンによる人命救助に成功
海で泳いでいるうちに沖に流されてしまった男性2人にドローンが救命具(浮き)を投下し、無事に救出するという世界初となるレスキュー事例が報道されています。
AFP(フランス通信社)のYouTubeチャンネルでは、ドローンカメラが捉えた救助の瞬間の映像が公開中。以下のリンク先の映像では、ドローンから救命具が投下されると、海中で膨らみ「浮き」になり、それに男性2人がつかまって高波をやりすごす様子を鮮明に見ることができます。
Australia lifesaving drone makes first rescue
なお、報道によれば、2名の男性はこの後ライフセーバーが待機する海岸にたどり着き、怪我などもなく無事に生還したそうです。
今回救助に使用されたという機体『リトル・リッパーUAV』と見られる機体のデモ映像はこちら。一見するとノリの軽い集団に見えないこともありませんが……彼ら(もしくはその仲間たち)こそが世界初のドローンによる人命救助を成し遂げたチームなのです。
Westpac Little Ripper Xmas CASA safety message on Vimeo
ちなみに「リトル・リッパー」シリーズにはヘリコプター型の機体もあるようです。
Little Ripper Intro
参考記事:ドローンによる世界初の人命救助
» オーストラリアの海岸でドローンが水難者救助、世界初
» 救命ドローン、海上で2人の救助に貢献 オーストラリア
» ドローン、海で少年救助=「世界初の事例」-豪
まだまだある!
世界の人命救助&防災ドローン
人命救助にドローンが使用された例は上記のオーストラリアのケースが初ですが、訓練や実証実験、コンセプトモデルなどとしての「人命救助用ドローン」は世界に多数存在しています。以下では、そのようなケースを動画でチェックしてみることにしましょう。
【2】サーマル(熱検知)カメラで遭難者を救助
世界最大の民生用ドローンメーカーDJIが公式プロモーション映像で紹介しているのは、アイスランドの氷河での遭難救助にあたるチーム。防水性能を備えるドローン『Matrice 200』とサーマル(熱検知)カメラを使用して遭難者の救助にあたります。ちなみに、サーマルカメラでは地表の温度が高い場合や木々が生い茂った場所で人間を見つけ出すのは難しいため、氷河のような場所での捜索に向く機材と言えるでしょう。
DJI – M200 – Search and Rescue in Extreme Environments
【3】固定翼ドローンを海難救助に活用
こちらはニュージーランドのクライストチャーチを拠点とするスタートアップ企業が開発する固定翼ドローン。地元の有志からなるコーストガード(沿岸警備隊)と協力して海難救助に取り組んでおり、有人飛行機やヘリコプターなどを投入するのが危険な場所でも空からの捜索を可能にするために機体の開発を進めているそうです。ちなみに、大型の機体は10時間の飛行が可能で、レスキュー用具(浮き輪など?)を搭載することも可能だそうです。
New Zealand's search and rescue drones
【4】イラン版海難救助ドローン
イランのテヘランで開発が進む海難救助用のドローンです。開発をしている男性によれば「カスピ海では4年間に1100人以上が溺れて、亡くなっている」とのことで、そのような場所での救助にあたる事を想定して開発が進められています。ちなみに、海岸からの救助にあたる訓練で、ライフガードが到達するのに91秒かかった距離へ、ドローンはわずか22秒で到達できたそうです。
The Iranian Drones That Save Lives
【5】ドローンから放水
救助とは少し種類が違うかもしれませんが……地上の消防車(ポンプ車)と接続されたホースの先をドローンに搭載し、空から消火活動を行なうための機体も開発も行われています。はしご車より高い場所から放水可能で、小回りをきかせてピンポイントで消火ができる点がメリットのようです。
Aerones Firefighting Drone
【6】輸血用の血液をドローンで届ける
ルワンダで活動するジップライン社は半径75kmの圏内に自動航行で輸血用の血液を届けるためのドローンを開発しています。ルワンダの郊外は陸上の移動が難しい山がちなエリアがあり、現状のバイクやトラックによる輸送では手術の際に輸血用血液の到着を1日以上も待たなければならないことがあり、そういった問題を解決するためにドローンの活用が検討されているそうです。
Drones carry patients' blood for a fee in Rwanda
【7】空飛ぶAEDのコンセプト映像
こちらは「アンビュランス(救急車)ドローン」と名付けられた機体のコンセプト映像です。心肺停止かそれに近い状態の患者に電気ショックを送り蘇生するAED(自動体外式除細動器)をドローンに搭載し、通報があった場所をスマートフォンから送られる位置情報から特定し空から急行、機体が備えたスピーカーから音声によるガイダンスを行ない使用者のサポートをするというものです。
TU Delft – Ambulance Drone
編集後記
既に空撮や点検、測量、リモートセンシングなどの分野で活用が進みつつあるドローンが、レスキューの分野でも活用できるということがオーストラリアでの救助の成功で証明されました。もちろん、救助が必要な状態に陥る人が出ないことがベストではありますが「ドローンの活躍で無事に2名の命が救われた」という事実は、明るいニュースと言えるでしょう。
ドローン関連の報道は、ともすれば軍事に関わる話題や事故のニュースが目につきがちなこともあり、今回のようなポジティブな話題が増えることを願わずにはいられません。