ロボットと言われてまず連想するのが、SF映画に登場するロボットではないでしょうか。世界的な大ヒット映画「Star Wars」に登場するC‐3POや、機動戦士ガンダムなどを思い浮かべる人も多いでしょう。
ちなみに、ロボットはチェコ語の「robota(骨の折れる仕事)」という単語に由来しています。
近年、ロボット開発の分野は目覚ましい発展を遂げています。その中で、アメリカの電動輸送機器およびクリーンエネルギー関連企業「テスラ」の最高経営責任者イーロン・マスク氏が、2022年9月30日に開催された同社のイベントで、AI搭載型ヒューマノイド「Optimus」を発表しました。今回の記事では、「Optimus」プロトタイプの概要やスペックについて解説します。
もくじ
ヒューマノイドロボットとは?
近年の産業界では、ヒューマノイドロボットの研究開発が加速しています。ヒューマノイドは、1920年後半にアメリカや英国、日本を中心に誕生したのが始まりです。
それまでのロボットの概念は2次元の世界というイメージでしたが、技術が進歩するにつれて3次元、つまり現実世界での成長をスタートさせるまでに至っています。
はじめに、ヒューマノイドロボットの概要と、よく混同されがちな「アンドロイド」「サイボーグ」との違いについてご紹介します。
ヒューマノイドロボットの概要
ヒューマノイドロボットとは、人の形に類似したロボットや生き物のことです。「ヒューマノイド」は「人間とよく似た」という意味で、一般的には人型ロボットの総称として使われます。人の形をしている理由としては、人間が使うシステムを代行させるために設計されているからです。
しかし、必ずしもリアルな人間の姿だけではなく、キャラクター調のものや動物系の外装の場合もあります。
現在では既に社内やイベント会場などでヒューマノイドを目にする機会も増えており、今後も市場が拡大していくと考えられるでしょう。
ヒューマノイドには、大きく分けて2足歩行型と車輪型の2種類があります。
2足歩行型は、2本の足で身体を支えることが可能です。従来のロボットは階段など段差のある移動が困難でしたが、歩行機能によってバランスを取りながら楽に移動ができるという特徴があります。
一方で車輪型は、脚部が車輪になっていて、流れるように移動するのが特徴です。2足歩行型よりも電力消費を抑えることが可能で、バランスを崩して転倒することもほとんどありません。
ヒューマノイドの活用用途として、火災や地震など災害が起きた際に人間では踏み込めないような場所に行かせて状況を把握することや、業務効率の悪い作業の代行をさせ業務改善を実現するなどが挙げられます。
アンドロイド、サイボーグとの違い
まずアンドロイドは、ヒューマノイドと同様に人の形を模して作られたロボットで、コンピューター制御により自動動作を行います。ただし、ヒューマノイドは表面的な姿も人間に寄せるように作られますが、アンドロイドはシルエットが人の形を模していれば、外装は機械がむき出しの状態でも問題ありません。また、歩いたり腕を動かしたりなどの単純作業しかできないことも、アンドロイドの特徴です。
一方で、サイボーグとは身体の一部分を機械化している状態を指します。損失または弱体化した部分の機能を補完する場合と、能力を通常より高めるために機械化する場合があります。
サイボーグは、人間としての部分が一部残っているため、ヒューマノイドやアンドロイドとは異なり、「ロボットとして造られたもの」とは大きく定義が外れます。
テスラの最新ヒューマノイドロボットは何がすごい?

出典:https://www.youtube.com/watch?v=ODSJsviD_SU&t=1095s
現在、ヒューマノイドロボットを研究開発する企業は世界中に数多く存在し、特に高性能なものに関してはメディアなどでも注目されています。そんな中、アメリカの有名企業「テスラ」が、2022年9月30日の同社イベントにてAI搭載型ヒューマノイド「Optimus」プロトタイプを発表しました。前年の同イベントにてOptimusの開発を発表してから、わずか1年程度でお披露目しています。
Optimusは、人型ロボットにより人間が行う作業を代行させるコンセプトのもと開発された、テスラ待望のAIロボットです。現段階ではあくまでプロトタイプであるため、披露されたアクションは観客に手を振ったり、ゆっくり踊ったりするなどの簡単な動作だけでした。しかし、転倒防止に利用されるハンガーロープを使わずに2足歩行を披露するなど、革新的な要素もみられています。また、ステージ上では披露されなかったものの、箱を持ち上げる動作や草に水をやるといった新たな動作が動画で同時公開されました。

出典:https://www.youtube.com/watch?v=ODSJsviD_SU&t=1095s
Optimusのスペックは身長がおよそ180cm、重さは約73kgで、成人男性程度のシルエットをしています。全身には28のアクチュエーターを搭載し、手は11の自由度を持ちます。なお、アクチュエーターなどのパーツは、すべて自社で開発を進めています。
その他にも、テスラの車に搭載されている自動運転技術を活用し、複数のカメラから障害物を検出して最適な歩行ルートでの移動が可能になっています。体内に搭載するバッテリーパックは2.3kWhの容量があり、これはロボットが丸1日作業し続けることができるほどの容量です。心臓部にはテスラの電気自動車と同じTesla SoCを採用し、Wi-FiおよびLTE接続にも対応しています。
さらに、ハードウェアレベルのセキュリティ機能も備えており、これは転倒時の故障回避だけでなく、周囲の人々を守るために重要な技術と言えるでしょう。
Optimusプロトタイプの販売・今後の展望について
2021年のプロジェクト発表からわずか1年あまりで、プロトタイプとはいえハンガーロープを使用せずに2足歩行の技術を披露したOptimusの有能性は高いものがあるでしょう。しかし、まだ開発途中であるため、最終的な外装のデザインや動作性などはヴェールに包まれている部分も多々あるのが現状です。
ここからは、Optimusの販売価格・量産開始時期と、今後のスケジュールについてご紹介します。
販売価格と販売日
販売価格については、現段階では2万ドル、日本円に換算すると約290万円程度の販売を目指しています。量産時期に関しては、早ければ2023年中に開始する予定だとイーロン・マスク氏が各メディアで語っています。
今後のスケジュール
先程もご紹介したとおり、イベントで登場したOptimusプロトタイプは関節部分などの機械がむき出しの状態で、歩行についてもぎこちなさが目立つ印象でした。そのため、人間のようなスムーズな動作性を実現するには、さらに多くの開発時間を要することになります。テスラでは、人間をベースとした研究と開発プラットフォームを構築したことで、Optimusプロトタイプの設計・実行という双方のプロセスが可能になりました。
これにより、コンセプトから設計、分析、そして製造と検証を経て完成を目指しているとイーロン・マスク氏は語っています。開発担当者たちは、今後プロトタイプから実用的なモデルに至るまでに対処しなければならない障壁について話し合いを設け、数か月または数年以内の開発完了を目指しています。
開発を進めるにあたり部品点数を見直し、すべての要素の消費電力を可能な限り削減したり、四肢の配線やセンサーを減らしたりといった工夫を施し、これまで以上に生産性を高めていく考えです。
イーロン・マスク氏は、Optimusによって豊かな未来や貧困のない未来、製品やサービスに関して欲しいものが手に入る未来が訪れると主張しています。
編集後記
近年は、生活をサポートする目的や業務効率化を目的として様々なロボットが開発されています。ヒューマノイドもその一つで、主に災害活動の場面や人手不足に陥っている場面で活用されることが多く、今後も市場が拡大していくことが予想されます。
そんな中、アメリカの有名企業「テスラ」は、AI搭載型ヒューマノイド「Optimus」のプロトタイプを2022年9月30日開催の同イベント内で発表しています。テスラが長年培ってきた自動運転ユニットを活用したAI技術を応用して、人間が行う作業を代行することをコンセプトに開発されました。
現段階では、デザイン性や動作性など不完全な部分も多くあるため、実用化されるのにはまだ時間がかかりそうです。今後は、制作段階において様々な改善を行い、ロボットによるさらなる技術革新が期待できるでしょう。
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