ドローン攻撃によるサウジ被害の余波続く…軍事用ドローンの現在

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9月14日、サウジアラビア王国の国有石油会社『サウジアラムコ』の石油精製施設がドローン攻撃を受けた余波は、依然として続いています。

これまで、サウジアラビアは数十億ドルもの金額を費やし、国防を目的とした最新鋭の防空システムを導入してきました。この防空システムはアメリカ製のものが中心であり、高高度からの攻撃に備えられたシステムなのだそうです。しかし、今回はドローンと巡航ミサイルを組み合わせることによって行なわれた想定外の攻撃。低速・低高度からの攻撃に対して、レーダーによる検知やミサイルでの迎撃が難しかったとみられています。

今回のドローン攻撃による巨大石油施設へのダメージは大きく、サウジアラビアにおける原油生産量は半減したといわれています。生産量がもとの水準に戻るのは、9月末になる見通しです。今後も大規模なインフラ施設が標的とされる懸念があり、サウジアラビアでは国防体制の見直しが急務となっています。 

動画:ドローン攻撃で油田が爆発炎上、サウジアラビアで大規模被害発生

海外で開発・導入が進められている軍事用ドローン

日本国内におけるドローンといえば、インフラ点検・調査、災害救助、航空測量などの産業用。または、観光地で空撮を楽しむためのホビー用、ドローンレース用などが主な用途です。

しかし、ドローンは、安価で操縦へのハードルが低いことが利点。さらに、前述のとおり低速・低高度での飛行が可能であることから、レーダーによる検知やミサイルによる迎撃が難しいとされています。こうした背景から、軍事用ドローンは多くの戦地で導入されているのです。

近年、中国では軍事用ドローンの開発に急ピッチで着手しています。しかしアメリカでは、国家安全保障上の懸念を理由として、今年8月に国防権限法が施工されました。この法律は、米軍における中国製軍事用ドローンの購入を禁止とするというものです。また、中国ドローンメーカー最大手のDJIに対するアメリカの技術供給を停止するなど、中国側にとって厳しい状況が続いています。

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イラン製軍事用ドローン『アバビール』の脅威

今回、攻撃を受けたサウジアラビア王国が位置する中東地域。中東各国の紛争地帯では、イラン製の軍事用ドローン『アバビール』が中心的な役割を担うようになっています。『アバビール』とは、イスラームの聖典コーランに登場する神が遣わした鳥の名前です。

これまで、軍事用ドローンの技術はアメリカやイスラエルが独占し、次いで中国が急速に開発を進めているといった構図でした。しかし、イラン側がアメリカ製の軍事用ドローンを手に入れ、分解して核となる技術を習得するように。そして、各国から市販されている安価な部品を買い集めることで、イランは軍事用ドローンの製造・開発を実現させました。

『アバビール』の航続距離は約1,200km。改良型の機体には、爆弾の搭載が可能であるとされています。1機あたりの価格が200ドルであることも、紛争地帯への利用に拍車がかかる要因でしょう。

先日のサウジアラビア石油施設へのドローン攻撃について、サウジアラビア国防省マリキ報道官は、攻撃にイランが関与しているとの見方を示しています。一方で、イランのハタミ国防相はイランの関与を否定し、攻撃はフーシ派によるものだと主張しています。2015年から、イエメンでサウジアラビア主導の連合軍と戦いを展開してきたフーシ派。これまでにも、サウジアラビア側の防衛をすり抜けられる長距離に長けた攻撃力を持つことを表明してきました。フーシ派は、戦地で『アバビール』を使用していることで知られています。

NETFLIXのドキュメンタリー『ドローン戦争の真実』

©NETFLIX

現在NETFLIXでは、『ドローン戦争の真実』が配信中。米軍として、アフガニスタンで軍事用ドローンに携わっていた三名の人物にスポットをあてたドキュメンタリーです。

三名のうち、実際に操縦にかかわったのはひとりだけ。残る二名は、攻撃時の指示および着弾後の状況確認、そして監視用無人機のシステム構築などに携わっていました。

戦地でドローン攻撃に従事した彼らは、凄惨な光景に精神的ダメージを受けたり、戦地で安易にドローンを導入することに抗議したり、自らが遂行してきた仕事に疑問を抱いたり。さまざまな苦悩を抱えながらも、三者三様の行動を起こす彼らの姿が濃密に映し出されています。

編集後記

安価で操縦が容易であり、誰もが簡単に触れることのできるドローン。その一方で、多くの軍事用ドローンが開発され、戦地で尊い命を奪う凶器となっていることも実情です。日本国内では、人々の生活を支えたり、美しい景色を空撮したり、その技術をレースで競ったりと、戦争とはかけ離れたあらゆるシーンで活用されています。平和的に、安全かつ適切な方法でドローンを活用していきたい──その想いがあるからこそ、今回のサウジアラビアで起きたドローン攻撃の事件を他人事として捉えず、ドローンを取り巻く現状について自分なりに考えていくことが大切なのかもしれません。

ドローンによる銃撃はかつてないほど容易になった。私たちの社会はこれをどう扱うべきか?

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2019.09.20