2021年後半から「メタバース」という言葉がインターネット上でよく見かけるようになりました。
コロナ禍となってからはオンラインコミュニケーションのあり方が模索され、様々なコンテンツが名をはせてきたと感じている方も多いはず。例えばClubhouseは招待制の音声SNSとして話題になりました。
メタバースはコミュニケーションツールの側面だけではなく、経済的側面からも注目されています。
Meta(元Facebook)をはじめとしたアメリカのテック企業を中心に投資が加速しているメタバース。
本記事ではメタバースについて言葉の成り立ちから、注目されている理由やポテンシャルについてわかりやすく解説していきます。
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メタバースとは?注目されている理由
コンテンツ例を紹介
メタバースとは、インターネット上の仮想空間を意味する造語。
メタ(meta=超越、超える)とユニバース(universe=宇宙)を組み合わせて作られています。
メタバースにおける仮想空間では自分のアバターを作成しユーザー同士でコミュニケーションを取るなど、様々な活動ができるのが特徴です。
バーチャルオフィスやリモート会議、チャット、ゲームなどに活用されています。
メタバースが注目されている背景
1.VR体験技術の進化
メタバースは、IT技術の目覚ましい発展により使い方が広がったことで注目度が高まりました。
メタバースとは目新しい技術ではありません。しかしかつては「ゲーム」や「ブログ」といった特定のツール内で交流を目的とする限定的な使われ方が主流でした。
最近では仕事上でのコミュニケーションにメタバースが活用されるなど、自由度が各段に飛躍しているのです。
メタバースを利用したライブ開催事例も増えており、新たなエンターテインメントの形として期待を集めています。
2.コロナ禍で増加したオンラインコミュニケーション
2020年から新型コロナウイルスの世界的な流行によりステイホームが促され、人々の外出や移動、リアルコミュニケーションは制限されました。
このような状況でオンラインコミュニケーションへの需要が一気に高まったことも、メタバースが注目される要因の一つといえます。
既存のビデオ通話チャットツールは、ビジネスや娯楽ともに数多くあります。例えばZoomやスカイプ、PS4・PS5、Nintendo Switchなどです。
その中でもメタバースに人気が集まっているのは、仮想空間という一つの世界の中でコミュニケーションが取れることにあります。
バーチャル空間でありながらリアルを感じられる特性は、多くの人々がインターネットでのコミュニケーションに熱中するきっかけとなっていくでしょう。
3.「NFT」との融合による経済活動の成長
前述したように、メタバースには無限の利用方法があります。
そのためビジネス分野においても幅広く参入の余地があるといえるでしょう。
メタバース内ではアイテムの生成や譲渡が可能です。これらとブロックチェーン技術がかけあわせることで消費活動を生み出すことができます。
また「NFT」技術では複製不可能な唯一のアイテムをデジタル所有でき、商品の価値を保護することができます。
このような技術により、メタバース内に新たな経済圏を席巻できるのではないかと考えられているのです。
メタバースのコンテンツ例
「メタバース」の意味は分かったけれど、いまいちイメージがわいてこないという方もいらっしゃるでしょう。
アニメーション作品にはメタバースに近い概念が登場しています。例えば、「サマーウォーズ」の「OZ」や「竜とそばかすの姫」にでてくる「U」、「ソード・アート・オンライン」シリーズに出てくるゲームなどです。
しかしメタバースは現実にある身近なコンテンツにも存在しています。
任天堂「あつまれどうぶつの森」

出典:公式サイト
「あつまれどうぶつの森」は2020年にNintendo Switchで発売されたゲームソフト。
島でののんびりとしたスローライフを楽しめる世界観が特徴です。
プレイヤーは自分が暮らす島を地形からカスタマイズできます。
1人でもくもくと楽しむタイプのゲームですが、「夢番地」機能を使うと他のプレイヤーが作った島への訪問と交流が可能です。
また「マイデザイン」機能では、ゲーム内で使える衣服や看板をデザインできます。自分で考える楽しさはもちろん、既存の服を再現する楽しみ方も大きな話題を呼びました。例えば、ブランド服やアニメキャラクターの服、アーティストの衣装などです。
このようなブームを受けてMarc JacobsやValentinoなどの有名アパレルブランドは、ゲーム内で自社ブランド製品を作れる「マイデザイン」を公開。
ゲーム内での経済活動こそありませんが、多くの企業が注目しているコンテンツといえるでしょう。
Epic Games「フォートナイト」

出典:公式サイト
「フォートナイト」は2017年に発売されたシューティングゲーム。2020年にはユーザー数が3億5000万人を突破し、バトルロワイヤルゲームのなかでも世界的な人気を博しています。
2種類の新規モード実装により、フォートナイトは最もメタバースに近いコンテンツと言われるようになりました。
一つは「クリエイティブモード」。もう一つは「パーティロワイヤルモード」です。
「クリエイティブモード」では、プレイヤーが自身のフィールド(島)を作ることができる機能です。
「パーティロワイヤルモード」は戦闘ではなく、仮想空間でのライブや映画鑑賞が楽しめます。
このような新規モード搭載により、フォートナイトは遊び場としてだけではなく、エンタメを楽しめるなどプレイヤー同士の交流を深めるプラットフォームの位置づけを確立しました。
マイクロソフト「マインクラフト」

出典:公式サイト
「マインクラフト」はブロック状のアイテムを利用して建築・採掘・戦闘・探検など多様な楽しみ方ができるゲームです。小学生を中心に子どもの間で人気が広がっており、教育現場に取り入れる動きもあります。
マインクラフトは、遊び方の指針となるチュートリアルがありません。ユーザーの発想次第で楽しみ方は無限大なのが特徴です。
定期的なアップデートでアイテムやバイオームが追加されるため、飽きることなくプレイし続けることができます。
そんな自由さが売りのマインクラフトですが、近々ブロックチェーン技術を取り入れる動きもあるようです。
マインクラフト上でアイテムの売買ができる日もそう遠くないかもしれません。
メタバースの特徴とは?既存技術との違いや共通点を解説
過去事例をご紹介
メタバースと既存技術VRの違い1.ハードかソフトか
仮想空間を体験できるという点ではメタバースもVRも同じなのではないか、と混同してしまいますよね。
メタバースはソフトウェアで作られた仮想空間。一方VRは仮想空間を体験するためのハードウェアデバイスなのです。
つまりメタバースはVR技術を通して体験できる仮想空間であり、様々な技術を包括しているといえます。
ただし「VR=仮想現実」と定義する用例も多く、両者を似た意味合いで捉えるのも間違いではありません。
メタバースと既存技術VRの違い2.コミュニティ形成を重視しているか
似た意味合いを持つメタバースとVRですが、仮想空間で得られる体験は大きく異なります。
VRは1人の人間が仮想空間での体験を楽しむためのもの。一方メタバースは、自分以外のユーザーとの交流に重きを置いています。コミュニティ形成を重視して作られているのが特徴です。
より多くの人と共通体験を持てるというのが、メタバースならではの強みといえるでしょう。
メタバースは過去にもブームがあった?
前述の通りメタバースは誕生したばかりの新技術ではありません。
かつてブームを巻き起こしたサービスを一部ご紹介します。
セカンドライフ

出典:公式サイト
2003年にLinden Lab社によりスタートしたサービス。
仮想空間内での交流がメインで、ゲーム内の通貨を使って物品やサービスを売買できます。
最大の特徴はゲーム内で稼いだ通貨を現実の通貨に換金できること。
デジタル不動産を高額で取り引きできることが話題となり、世界的なブームを巻き起こしました。
しかしながらサーバー環境の改善が追いつかず、ゲームをプレイできるユーザーを制限したことでブームに歯止めがかかったようです。
現在もサービスは継続されています。
アメーバピグ

出典:公式サイト
2009年からサイバーエージェント会社が運営しているサービス。
「ピグ」と呼ばれるアバターを使い、仮想空間内にある広場でチャットができるものです。広場は渋谷や浅草など実在する街をもとにデザインされており、ユーザーも親近感を持ちながら楽しめるポイントとなっていました。
サービス開始1ヵ月後には登録数が10万人を超えるほどの人気でしたが、2019年にAdobe Flashの廃止に併せてPC・モバイル版のサービスは終了しています。
スマートフォン版は現在もサービス継続中です。
メタバースの現在
このようにメタバースは様々なサービスで活用され多くの人々が熱中してきました。
再び注目が集まっているメタバース。仮想空間の表現技術が向上しただけではなく、周辺デジタル機器やインターネット回線の性能が高まっていることも起因しています。
特にインターネット回線の強化・高速化により、同時に複数人で同一のコンテンツにアクセスできるようになりました。現代のメタバースだからこそ味わえる楽しみ方といえるでしょう。
また家庭用パソコンやゲーム機器のスペックが高められたことでCGで表現された仮想空間により一層没入できるところも、近年の技術進化の賜物といえます。
メタバースは投資などのビジネスに役立つ?
現実では難しい世界を実現できる
メタバースの最大の特徴は、現実世界では実現できない空間を作り出し多くの人と共有できることにあります。
特にエンターテインメント業界においては、これから重宝される技術でしょう。
例えば、アニメや漫画など架空の人物や世界を現実で再現するのは不可能に近いです。
しかしメタバースを活用すれば、キャラクターと同じ空間に存在する体験が得られるのです。
研究分野においてもメタバース上でシミュレーションした状況を作り出すことでデータを採集しやすくするというメリットが考えられます。議論の活性化につながるでしょう。
生産性向上につながる
メタバースはオンラインとオフラインのギャップをなくすことができるのがメリットです。
ビジネスシーンにおいてはWeb会議の導入が進み、遠隔にいながらコミュニケーションを取ることへの抵抗感は徐々に薄れつつあります。
しかし業務状況や業種によっては現地に足を運ばなければいけません。例えば社員研修は、直接顔を合わせて行う方がスムーズだと感じる方も多いはずです。
このように物理的な距離感がネックとなるようなシーンでもメタバースは役立つと考えられています。
なぜなら既存のオンラインコミュニケーションツールよりも多くの情報量を得ることができるからです。
共通の体験を得られるというところがメタバースならではのポイントといえるでしょう。
メタバースは業務効率を高めるツールとして活用できるのです。
次世代SNSとしての期待
メタバースは、仮想空間に世界中の人々が集まり、アバターを通してリアルタイムで情報交換ができます。
仮想空間という独自の環境は、VRやヘッドセットを利用して臨場感や没入感を得られます。さらにユーザーは一人ひとり3Dアバターとして仮想空間に存在しており、現実では離れた場所にいる仲間とでもリアルな会話を楽しむことが可能です。
このような点が従来SNSとの違いであり、今後人々の生活の一部として定着する新たなSNSになるのではないかと注目されているポイントです。
新たな消費の形が作られる
メタバースの仮想空間を一つのプラットフォームと捉え、街や居住空間と位置づけることでユーザーに消費行動(課金)を促すことができるのではないかと考えられています。アバターの衣服、イベントやライブなどのエンターテインメント、オンライン学習など商材は多種多様です。
また「NFT」技術を活用すれば商品の資産価値を担保することや、所有の証明もできます。
デジタル世界のなかで芸術品や不動産などの高額な商品を取り引きする機会を作ることも可能です。
そのため経済規模は従来のSNSの比にならないほど増える可能性があるといわれています。
カナダのエマージェン・リサーチ社による予想では、メタバース内の消費により関連市場は次のように成長するそうです。
2020年では約5兆5千億円なのに対し、2028年には約100兆円規模へと拡大。
このような予想が打ち立てられているため、多くの企業がメタバース技術に投資を行っているというわけです。
▼参考
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000041.000082259.html
編集後記
2022年のトレンドワード「メタバース」について、言葉の意味や特徴、ビジネスとの関連性の高さをご紹介しました。
娯楽コンテンツとして位置づけられている印象も強いですが、仕事でのコミュニケーションや業務ツールとして活用できる振れ幅の広さが再び注目を集める所以となっています。
これからどのような経済的発展を遂げていき、私たちの生活と関わってくるのでしょうか。
楽しみですね。
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