△Valqari社が発表したドローン宅配ボックス「RCVR-PAD」の画像。
こんにちは!外資系ドローン企業のしゃちょーです!
最近は国内のニュースでも「ドローンの物流」を取り上げたものが多くなってきましたね。
Eコマースの発展とともに、宅配便の取り扱い個数量は年々増加しているものの、労働人口減少の煽りでドライバー不足が深刻化しており、ラストワンマイルにおける配送の課題感に拍車がかかっています。そんな社会問題になりつつある宅配のインフラ・ネットワークの問題を解決するために、ヤマトや佐川、西濃などの大手運輸会社や、JALやANAなどの航空会社もこぞって参入してきています。
ですが、ドローン宅配が実現した暁には、実際どのように自宅で荷物を受け取るのでしょうか?ホバリングするドローンが上からパラシュートを使って荷物を落とす?それとも庭や玄関先にワイヤーを使って落とす?どれもその場に受け取る人が必要ですよね…。
そこで今回は、これから発展必須と言われているドローン配送における「目的地に到達してからの問題」ラストワンマイルならぬ、ラストワンインチ問題を解決するテクノロジーについて、アメリカの最新ニュースをお届けします!
もくじ
配送ドローンの「今」
近年、Amazonや楽天などのEコマースが普及し、宅配の取扱個数が急増しています。2008年度の日本国内の宅配便の取扱個数は32.1億個だったのに対し、2019年度には43.2億個と過去最高記録を更新したそうです。
さらにはコロナの影響でネットショッピングの需要は急増中。ただでさえドライバー不足で厳しかった物流業界では、宅配需要の急激な増加に追いつかず、配送遅延や一部サービスの停止が起きています。
他にも、⼈⼝の少ない郊外ではドライバーの不足だけではなく、物流インフラの維持も問題になっています。最後の集荷基地から顧客のいる場所まで荷物を配送する時に発生するこれらのラストワンマイル問題に対処するために、日本だけでなく世界中でドローンを用いた配送が実施され始めているのです。
△Amazon Prime AirのPV by Amazon公式
ドローン先進国であるアメリカでは、GAFAの中からAmazonとGoogleがドローン配送事業に乗り出しています。Amazonは遡ること2013年には、Amazon Prime Airプロジェクトを立ち上げ、ドローン配送事業の研究開発を公に進めています。Googleは親会社のAlphabetがWingというドローン企業を設立し、2019年にはアメリカ連邦航空局(FAA)からドローン配送企業第一号として運行認定を取得しています。先月末に2億5000万ドル(約276億円)という巨額の資金調達を発表したZipline社も、コロナ禍でドローンを使いワクチン輸送をしたことで話題になりました。
日本では、楽天ドローンが千葉市と共同で、海上を飛行してマンションまで配送する実証実験等を行っていたり、ドローン開発を行う自律制御システム研究所(ACSL)と日本郵便が業務提携するなど、ドローン配送の発展段階にあります。
ドローン配送のデメリットとは
ドローンは空を飛ぶので、信号待ちや渋滞に巻き込まれることはありません。自律飛行を前提とすることで、ドライバーの負担を減らすことができ、人件費の削減にもつながります。さらにはドローン配送によって二酸化炭素の排出を減らすことができ、持続可能な物流手段としても貢献できると考えられています。
このように良いこと尽くしのようなドローン配送ですが、実はデメリットも存在します。
人の手による配達でできてドローンにできないこと、それはインターホンを鳴らすことです。当たり前ですが、ドローンはインターホンを鳴らせませんので、受取人がその場にいなければいけない、という大きなデメリットがあります。
居住者が自宅を不在にしているかもドローンからは判別できないため、再配達をする判断がドローンにはできません。かといってドローンによる置き配の場合、軒先の下に回り込んで玄関前に正確に置くことは難しいため、荷物が盗難被害にあう可能性や雨風に晒されるリスクも高まります。
同時に、ドローンによる配送は、荷物をどう降ろすかといった他の課題も存在します。パラシュートやワイヤーを用いて降下させる例が多いですが、荷物が損傷してしまう可能性が少なからずあるため、現行の人の手による受け渡しの品質が担保されないということも問題です。
「ラストワンインチ」問題を解決するドローンポートが現れた!
△2021年7月7日のStartEngine Shark Pitchでプレゼンされた資料のスクリーンショットです。 ドローンがボックスから発車する様子が捉えられます。
そんなドローン配送の本当に最終工程の課題、「ラストワンインチ」問題を解決するべく、アメリカのシカゴを拠点とするスタートアップ企業のValqari社は、荷物を受取るためのドローン配達ボックスを開発しました。
このドローン配達ボックスは、配達ボックス上部をドローンの離発着スペースとして使い、ドローンで運ばれてきた荷物を床面が昇降することで、ボックス内部に荷物を格納することが出来ます。
この方法をとることで、ドローンから荷物を降下させることで起こりうる破損リスクが解消され、さらには荷物をボックス内部に保管することが出来るので、盗難の恐れを払拭し、雨風による荷物の被害を防ぐことができるのです。
△荷物が格納されていく様子の動画(Valqari社のYouTubeより)
BtoBからBtoCモデルへ広がるドローン配送ボックス
今回ご紹介したValqariの新しいプロダクトですが、実はドローンのメッカ中国では、既に当たり前のように実運用フェーズで利用が始まっています。物流大手のDHLはEhangと共同で2019年から同様の事業を立ち上げていますし、Antwork社のドローン配送ボックスは50以上の中国の医療機関で導入されており、コロナ禍において日々の医療物資の運搬に使用されています。
しかし今回のValqari社の発表で注目すべきは、上記の用なBtoBの展開だけでなく、個人宅用にドローン配送ボックスを設置するところまでを具体的に描いている点です。
Valqari社は年内中に法人向けBtoBモデルとして、32,000ドルから35,000ドル(約350万円〜)の導入コストと、月額で300ドル(約33,000円)のサブスクリプション料金で提供を開始するそうです。同時に、来年以降にはもっと安価なモデルを生産し、1,500ドルで個人宅向けに販売を開始するそう。もちろん個人向けにもサブスク料金があるとのことですが、現時点では月額の使用料やサービス内容は発表されていません。Valqari社は2022年には1200万ドル(約13億円)の売上を見込んでいるとか。
△画像クレジット:Valqari社によるStartEngine Shark Pitchのプレゼン資料より
ドローン配送ボックスのハードウェアと合わせて、専用のアプリケーションも開発が進んでいます。ドローン配送の受け取り時間を指定したり、集荷依頼なんかもかけられたり、ドローンがどこを飛んでいるのかがひと目で分かるようになっているようです。
ドローン物流に合わせた住宅の設計
イギリスのIDU Groupはドローンポートを屋根に直接設置する方法を提案しています。ドローンでの物流が当たり前になる未来において、ドローン側にイノベーションを起こすのではなく、住宅側にイノベーションを起こし、自宅に据え置き型のドローンポートを設置するのです!
ドローンが対象の家に向かい始めるとアプリに通知がいき、家に近づくと自動でポートが開くように設計されています。屋根の高い場所に設置することで、犬などの動物からドローンが襲われることを防げますし、盗難の心配もなくなります。
△IDU Groupの「SMARTBOX」の紹介動画。英語の動画にはなりますが、最先端の技術が視覚情報のみでも十分伝わるようになっているので、2分19秒辺りから是非ご覧ください。
ミサワホームが始める日本のドローン物流対応住宅
実は日本でもこのような取り組みが行われており、7月9日にミサワホームがA.L.I. Technologiesと協力して、住まいづくり体感施設「ミサワパーク東京」(東京都杉並区)にドローンによる個別配送システムを実装しました。
A.L.I. Technologiesが提供するC.O.S.M.O.S.という運行管理システムを用いて、荷物を運ぶ機体を遠隔操作し、自宅に設置された自走型ドローンポートが、ドローンの接近に合わせて着地ポイントまで向かいます。ドローンはポートに着地して荷物を受け渡した後に離陸し、ポートは荷物を住居の中へと運ぶ画期的な仕組みとなっています。
△ドローンポートが荷物を受け取り、家の中の所定位置に戻っていく様子です。
△ドローンポートは、屋根下の待機場所から荷物の到着場所に⾃動で移動し、受け取り後は所定の位置まで戻り、ワイヤレス給電により充電して待機します。(画像クレジット:ミサワホーム)
編集後記
もう何度も筆者の記事に登場したのでご存知の方も多いと思いますが、日本政府は有人地帯での目視外飛行における飛行を2022年度に実現すると発表しています。そのために機体認証や操縦ライセンスなどの法改正がなされる予定です。
操縦ライセンスは一等資格と二等資格に分類されます。中でも一等資格を取得すれば第三者の上空での飛行や目視外飛行ができるようになるので、これから確実に伸びると言っても過言ではないドローン配送業において活躍できること間違いなしです!!
また、ドローン配送のみならず、ドローンポート自体がまだまだ発展途上にあるので、ドローンポートビジネスも熱い展開を迎えそうな予感です。
20代はテレビ番組制作会社のADで、ゴールデンタイムの情報バラエティ番組を担当。月給16万&週休0日から、気づけば外資系企業の日本法人を預かる身に転身。ドローンの会社なのに、ドローン飛ばせないことで有名。ニックネームはドローン業界の「おしゃべりバズーカ」。海外のドローンニュースをお届けします!