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花王、ドローン散布専用の農薬補助剤を中国で先行販売

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花王は、ドローン散布専用の農薬補助剤「アジュバント」を開発。日本などに先駆けて中国で先行販売しました。

ドローンによる農薬散布は、従来の方法に比べて時間を大幅に短縮できることがメリットです。
しかし地上から約2メートルの高さから農薬をまくため、風に流されやすく、狙った場所に投下できないというデメリットもありました。

「アジュバント」は、このような問題点を大幅に改善するよう研究開発が進められ、効き目の高い農薬補助剤として注目されているようです。

「アジュバント」の性質や今までの農薬(補助剤)との違い、農業におけるドローン活用の有用性についてお伝えします。

「アジュバント」とは?
ドローンによる農薬散布問題を解決に導く

「アジュバント」は、ドローンを使った農薬散布の効果を大幅に高めることができるとして注目されている農薬補助剤。

どのような技術により、従来の農薬が抱えていた問題を改善したのかご紹介します。

ドローンによる農薬散布のメリット・デメリット

メリット

  • 時間短縮できる

従来の車両型の散布機による農薬散布に比べて、ドローンを利用した農薬散布はおよそ10分の1の時間しかかかりません

また労力だけでなく、農薬の散布量も著しく少なくできることもメリットです。

デメリット

  • きちんと散布されているか視認しづらい

通常は地上から50センチほどの高さから農薬を散布するのに対し、ドローンは約2メートルの高さから農薬を散布します。

まいた農薬が風によって流されやすく、本来散布対象ではない畑にかかっていると出荷規制になる可能性もあります。

「アジュバント」の特徴

アジュバント(機能性展着剤)は、農薬を散布するときに補助剤です。

最大の特徴は、混入させた界面活性剤により液滴一つ一つが膜で覆われること
これにより、ドローンを利用した農薬散布においても、落下時に液滴が外気に触れるのを防ぐことができます。

液滴を一定の重量に保ちながら落下させ、風の影響を受けにくくしました。

「アジュバント」を利用したドローン農薬散布時に見られる効果とは

「アジュバント」は、少ない農薬で農作物の害虫被害や雑草ダメージに高い効果を発揮することが可能です。

農薬は作物を病気や害虫から守り、不要な雑草を除く役割があります。一方で人体への安全性や環境への影響についても考慮しなくてはいけません。

日本国内においては「農薬取締法」により製造・輸入・販売・使用量にいたるまでを厳しく規制・管理されています。
そのため作物の種類によって農薬の効き目にばらつきがある場合でも、むやみに量を増やすことや何度も散布することはできません。

花王は「アジュバント」を開発する中で、従来のドローンによる農薬散布における問題点を解決するために、薬の付着性を高めることが重要と考えました。

葉の表面に働く「表面張力」と、葉と葉・葉と茎などに働く「界面張力」を最小限に抑える技術を開発。どんな作物においても薬液が均一に濡れ広がるようになりました。

中国での実証実験においても、アジュバントなしで農薬散布したときに比べ、わずか3割の農薬使用量で同等の効果を得られたそうです。

▼参考
https://www.kao.com/jp/kaonokao/dna/3_1/

農業とドローンの将来性

最近では、産業用ドローンという言葉を聞く機会も増えてきています。
ドローンを利用することで作業効率を大幅に向上できるからです。

農業におけるドローン活用のあり方や可能性について考えてみましょう。

農業の現状と課題

2015年(平成27年)から2020年(令和2年)の5年間で農業従事者は、46万人減少し152万人となっています。(農林水産省が2020年4月に発表した「2020年農林業サンセス」による)

そのうち、基幹的農業従事者(普段仕事として、主に自営農業に従事している人)の変遷は以下の表の通りです。

▼参考
農林水産省「農業労働力に関する統計」
https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/08.html

全体数が減少し続ける中で、高齢者の割合が依然として高いことが分かります。

農業労働人口の減少に加えて問題視されているのが、耕作放棄地の増加

2010年時点では日本国土の10%強(約40万ヘクタール)が耕作放棄地となっており、滋賀県の面積に相当する広さです。

高齢の農業従事者が引退していくにつれて、耕作放棄地は増えていくことが考えられます。

これまで労働集約型だった農業では、人件費や労務費を削減しながら生産効率を高める働き方を実現していくことが重要です。

▼参考
農林水産省「荒廃農地の現状と対策」
https://www.maff.go.jp/j/nousin/tikei/houkiti/attach/pdf/index-13.pdf

農業におけるドローン活用の意義

高齢化に伴う労働人口の減少が問題視されている農業。
今まで以上に生産性向上のための技術開発が求められています。

そこで注目されているのがドローン技術です。

少ない労力で効率的に作業を進めていけるため、今後はドローン導入はどんどん進んでいくでしょう。
また「アジュバント」のように、ドローンを活用した農作業をより効果的にするための商品開発も発展していきそうです。

中国農村部におけるドローン活用

今回「アジュバント」が先行投入された中国は世界人口第一位。しかし農村部でも日本と同様に労働者の高齢化問題を抱えており、ドローンを導入する動きが急激に強まっています

花王による予測では、2025年には中国の全農地の3割で農薬散布にドローンが使用されるそうです。

一方で、環境配慮の観点から中国当局による農薬規制の動きも強まりつつあります。

「アジュバント」のように、農作業の生産性向上と減農薬の双方を解決できる製品の需要はどんどん高まっていくでしょう。

農業におけるドローン利用を促進させる「アジュバント」の今後とは

花王は、「アジュバント」の中国での販売開始を皮切りに、今後はタイやインドネシアといった東南アジアや、日本での投入も検討していくようです。

日本国内で「アジュバント」を使用するためには農林水産省への登録申請が必要で、現在は申請の準備中。

数年後の販売開始を予定しているとのことで、今後の情報にも注目です。

 

 




2021.09.18