ドローン専門のオンライン・メディアDroneTimes(ドローンタイムズ)が主催するイベント『ドローントークPIT』の特別版がゲスト・スピーカーに首都高速道路株式会社の保全・交通部長土橋浩さんを迎え幕張メッセで開催。テーマは『道路維持管理の実情とドローンにかける期待』で、同社が高速道路の保守点検用に独自に開発した『スマートインフラマネジメントシステム i-DREAMs(アイドリームス)』についての発表が行われました。
もくじ
取材レポート ドローントークPIT特別版
『i-DREAMS』は、首都高速道路の設計・材料データや施工・出来形記録などの管理システムと『InfraDoctor(インフラドクター)』というドローンでの写真点検や車載レーザーによる3D測量、損傷推定AIエンジンなどを統合したクラウドサービスで構成されており、これらを組み合わせることでインフラの健全度評価分析や劣化診断、予測を高精度に行なうことを目指すものです。
首都高速道路株式会社
土橋浩 保全・交通部長
発表概要
(↑)ドローンやIoT、AIやレーザー測量などの最新技術を総動員した首都高速のインフラ点検システム『i-DREAMs』の開発を主導した土橋部長がその全貌を語る。
土橋部長は発表の冒頭に日本におけるインフラに関わる社会的課題として「高度経済成長以降に集中的に整備されたインフラの高齢化が進行する」「生産年齢人口が減少しインフラの維持管理者と点検技術者も減る」という2点を挙げました。
インフラ高齢化の一例として紹介されたのは道路橋で、平成45年(2033年)には67%が建設後50年以上経過した状態となり、日本全国で約40万の橋が高齢化した状態を迎えるとのことです。また、首都高速においては総延長約319kmのうち173kmが20年後(2037年)に「50歳以上」になるそうです。
このように社会インフラの「高齢化」が進んだ時点においては、現在より保守点検や補修の頻度が増えることが間違いない一方で、それを担う生産年齢人口は著しく減少しているという困難になっていることが高い確率で見込まれています。
画像出典:生産年齢人口の減少|内閣府
『i-DREAMS』はこのような状況に対処するべく開発が行われたもので、レーザー測量、ドローン、IoT、AIなどのテクノロジーを総動員することで「保守点検の頻度増加と労働力の減少」という課題の解決に挑むものです。
『InfraDoctor(インフラドクター)』が、どのようなシステムなのか、という詳細は以下の公式の動画でチェックしてみてください。
「インフラドクター/InfraDoctor」インフラの維持管理を支援する新時代のシステム
首都高速でドローンの活躍が期待されるポイント
首都高速のインフラ点検において、ドローンはコンクリートのクラック(ヒビ)を検出する作業への活用が見込まれており、通常足場を組んでの作業が必要な高所の点検を空撮で代替し、写真データからAIで補修が必要な部分を特定するといった使い方が想定されています。
また、将来的には事故が発生した際などに現場に空から急行し、映像などで状況を知らせるといった利用法も検討されているそうです。
i-DREAMsとInfraDoctorの成果
クラウド上に資料や画像、3D点群データなどを保管しAIで分析することで、必要な資料を素早く集めたり、画像からAIを使って点検や修理が必要な場所を割り出す、3D点群データ上で点検や工事に必要な車両や建機が稼働するスペースがあるかを確認して現場での手戻りを無くす、といったことが可能になります。なお、土橋部長によれば、このような機能によって、20倍以上の生産性の向上を達成しているとのこと。
『i-DREAMs(アイドリームス)』の開発には約1億5000万円の費用が必要だったそうですが、生産性の向上によるコスト削減効果を考えると「2年でもとがとれる」ほどの成果をあげており、この実績をもとに今後は国内のインフラ管理団体や、日本と同様にインフラの高齢化と労働人口の減少が始まっているドイツや北欧へのシステム販売も視野に入れ、システムの改善と強化を続けていくそうです。
イベント概要 ドローントークPIT 特別版
- 主催:DroneTimes/産経新聞社
- 開催日:2017年12月1日(金)
- 会場:幕張メッセ 国際会議室 (第2回 橋梁・トンネル技術展と同時開催)
- ゲスト・スピーカー:首都高速道路株式会社の保全・交通部長土橋浩さん
- ナビゲーター:DroneTimes 副編集長 村山繁さん
- ファシリテーター:ドローンジョプラス DroneTimes公認ファシリテーター 佐々木 桃子さん
参考サイト
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