画像出典:Duke Robotics, Inc.、Duke Robotics Inc、以下同じ
もくじ
ドローンによる銃撃は、既に可能
デューク・ロボティクス社(Duke Robotics, Inc.)はアメリカ合衆国フロリダ州にある「戦闘用小型ドローン」を開発する企業です。
軍事用の攻撃ドローンと言えば『MQ-9 Reaper(リーパー)』などの翼幅が20メートルもあるような大型の機体を想像しがちですが、デューク・ロボティクス社が開発しているのは、私たちが普段目にする民生用ドローンと変わらないサイズの小型ドローンにアサルトライフルやショットガンなどを搭載し、空からの射撃を可能にするシステム。
『TIKAD(ティーキャッド)』と名付けられたこのドローンは、空撮用のドローンと同じくらい容易に操縦ができ、利用者は自らの命を危険にさらすことなく、まるで「空撮写真を撮る」のと同じ手軽さで、ライフル弾を敵に撃ち込めるのです。
【参考】A US defense contractor developed a sniper drone that could save lives – BI
【参考】A US defense contractor developed a drone that can fire a sniper rifle
デューク・ロボティクス社のマシンガン・ドローン
2017年半ばの時点で、IDF(イスラエル国防軍)と共同で実験を行なっているという報道もあり、すでに実用レベルに達していることがうかがえます。
デューク・ロボティクスが公開している『ティーキャッド』の公式画像は以下の通り。
機体の下部にアサルトライフルと射撃の反動を吸収する特殊な装置を搭載していることやカモフラージュ柄にペイントされていることを除けば、市販の産業用ドローンと大差のない仕様です。
利用シーンのイメージとして、スナイパーが監視する中東の街並(イエメンの旧市街のように見える)へ向かって武装した小型ドローンが飛び立つ様子が描かれています。また、この他にも同社のウェブサイトにはソマリアの海賊を思わせる武装ボートと対峙するドローンが登場するなど、どのような戦闘に役立つのかが具体的に想像できるビジュアル素材が提供されています。
子供を抱いた兵士のイメージに攻撃用ドローンの写真が重ねられている写真もありました。
『ティーキャッド』が実際にライフルで狙撃を行なう様子などをおさめた映像は以下の通り。
TIKAD – The Future Soldier – Duke Robotics Inc | Invest
編集後記
軍事用ドローンの歴史は古く、シンプルな自動航行システムを備えたドローン、既に第一世界大戦時から開発が進められており、ケタリング・バグのような機体が存在していたことが明らかになっています。また、現代においては大型の攻撃用ドローンはアメリカがアフガニスタン、パキスタン、イラクなどで展開する戦闘で無数の攻撃を繰り返しています。このようなことから「攻撃用ドローン」という兵器そのものは決して新しいものではないと言えるでしょう。しかし、デューク・ロボティクスの『ティーキャット』は、いまだかつて無いほどに低いコストと容易な操作性で「ドローンによる攻撃」を可能にしている点が特筆に値します。
今、私たちが生きているのは「ドローンが人を殺せる」時代ではなく、「ドローンが”容易に”人を殺せる」ことが現実になった時代です。「できるか? できないか?」と問われれば、もはや回答は明確で「既にできる」なのです。では、その先にある「やるべきか? やらざるべきか?」という問問いに私たちはどう答えるべきなのでしょうか?
小型ドローンの兵器化は、「自国の兵士を危険にさらすことなくテロリストを倒せる」と言えば良いことのようにも思えますが「まるでゲームをプレイするように人が殺せる」と言えば恐ろしくもあります。「敵の命を奪うこと」と「味方の命を守ること」が表裏一体となったドローン使用方法だけに、大いに賛否両論を巻き起こすことは間違いありません。
テクノロジーの進歩により不可能を可能にし、困難を容易にしてきたのが人類の歴史であることは確かですが、その結果得た力を制御し続ける能力が人類とその社会に備わっているのかは未知数です。