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空飛ぶクルマとは?実現に向けた流れと解消すべき課題も紹介

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「空飛ぶクルマ」というと、「SFの世界や遠い未来世界のもの」だと考える方が多いのではないでしょうか。しかし、近い将来、「空飛ぶクルマ」は現実の移動手段として利用されようとしています。現在、世界中の企業が「空飛ぶクルマ」に注目し、実用化に向けて研究開発や実証実験をしているのです。

そこでこの記事では、「空飛ぶクルマ」の開発の現状や課題について解説します。

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空飛ぶクルマとは何?

「空飛ぶクルマ」は、一般的には「電動垂直離着陸機(electric vertical takeoff and landing aircraft)」を指し、「eVTOL(イーブイトール)」とも呼ばれています。

新たな移動手段として注目されていますが、ドローンや飛行機とは一体何が違うのでしょうか。ここではまず、eVTOLの特徴や今後の展望について解説します。

eVTOLの特徴

出典:https://www.jobyaviation.com/news/joby-nasa-measure-noise-footprint-electric-air-taxi/

「eVTOL」は、操縦者不要の自動化技術が施されており、なおかつ滑走路を必要とせず垂直方向に離着陸できる航空機のことです。飛行機やヘリコプターとは違い、水平方向にゆとりのないビルの谷間や狭い敷地でも移動できます。さらに、電気で動くため騒音が少なく、静かに離着陸や飛行できる点も特徴です。

一方、ドローンとの違いには、「物」だけではなく「人」の移動も可能な点が挙げられます。そのため、通常の移動手段としてだけではなく、災害時の新たな救助手段としても期待されています。

市場規模

出典:https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2976

株式会社矢野経済研究所が2022年に行った調査によると、2025年を起点に世界中でeVTOLに関連する多くの事業が始まり、急激な機体導入やインフラ整備が進む見込みとされています。

具体的には、2025年には世界市場規模が146億2,500万円まで成長する予想です。なお、現在は欧州や北米、中国が市場をリードしていますが、今後は日本やその他地域でも動きが活発化し、市場規模は世界的に拡大を続けると考えられます。

また、公共移動手段としての定着化は2035年頃、個人の移動手段としての普及は2040年頃と推測されており、需要拡大に伴う急成長後、市場の安定化が見込まれる2050年頃には、世界市場規模120兆円を超える見通しです。

主な開発メーカー

非営利の学術・技術組織Vertical Flight Society(旧名称AHS International)の報告によると、現在、eVTOLの開発を手がける企業・団体は世界で100以上にのぼり、開発競争が激化しています。ここでは、eVTOL等のエアモビリティ開発に取り組んでいる世界の主なメーカーを紹介します。

eVTOLメーカー

jobby Aviation:ジョビーアビエイション(アメリカ)

出典:https://www.jobyaviation.com/news/joby-expands-partnership-us-department-defense/

2009年に設立されたアメリカのスタートアップ企業で、長距離移動型のeVTOLを開発し、数多くのテスト飛行を実施してきました。

航続距離は最大300キロ、最高時速は320キロを誇り、安全性にも優れていて、eVTOLの開発企業の資金調達ランキングにおいて首位に立っています。

EHang:イーハン(中国)

出典:https://www.ehang.com/article/

中国のドローンメーカーで、2020年に世界初とみられるeVTOLの商用パイロット運用の許可を取得しました。開発モデル「EHang AAV」は、最高時速130キロで35キロメートルの飛行が可能となっています。

volocopter:ボロコプター(ドイツ)

出典:https://www.volocopter.com/solutions/volocity

ドイツのスタートアップ企業で、2011年に世界初といわれるeVTOLの有人飛行を実施し、2017年にはエアタクシーのテスト飛行も行いました。2019年にはパイロット操縦のもとの都市部における有人試験飛行にも成功しています。

その他注目メーカー

AERWINS:エアウインズ(米国)

出典:https://aerwins.us/xturismo/

AERWINSは、プロペラの力で空中を走る実用型のバイク・エアモビリティ「Xturismo」を開発し、2021年から販売を開始している米国の企業です。Xturismoは、世界初の「空飛ぶバイク」として大きな注目を集めました。また、AERWINSの日本法人である「A.L.I. Technologies」は、エアモビリティの安全な社会実装に向けたアプリケーションや運航管理システム「C.O.S.M.O.S.」の開発も行っております。

空飛ぶクルマに期待できること

将来的には過疎地域の輸送手段の確保や離島への交通手段、緊急車両への活用、救急医療への対応等、幅広いシーンでの活躍が期待されています。さらに、住宅地やオフィス街、テーマパーク内、屋外駐車場などのさまざまな場所で利用できるため、都市部の渋滞解消にも役立つとされています。
また、電動であり二酸化炭素を放出しないことから、環境負荷の低減にもつながるでしょう。

eVTOL実用化への流れ

日本でも、eVTOLの実用化はすでに進められており、2019年から実証実験が開始されています。

経済産業省と国土交通省は2018年より議論を重ね、12月には政府と事業者が一丸となって世界で初めて「空飛ぶクルマ」の実現に向けたロードマップが取りまとめられました。

国土交通省の「空の移動革命に向けたロードマップ」によれば、2023年から事業化をスタートさせ、2030年からは事業化を拡大するという流れで実用化が進められていく予定です。なお、実用化は地方から進められていき、徐々に都市部でも展開されるとされています。

空飛ぶクルマ実現までに解消すべき課題

「空飛ぶクルマ」を実現するためには多くの課題がありますが、ロードマップでは、課題を「制度や体制の整備」と「機体や技術の開発」の2つに大きく分け、整えていくべき点を整理しています。
まず「制度や体制の整備」では、サービスとして考えなくてはならないことや、インフラ面の整備に関することが記載されています。保険加入をどうするのかということも課題です。

また「機体や技術の開発」では、航空機と同レベルの安全性を確保した上で、飛行の際の音の問題や電動のための技術開発を課題としています。加えて将来的には、自動飛行や地上からの遠隔操作も目指すということも明記されています。
ここからは、それぞれの観点に分けて課題点を見ていきましょう。

法改正 (航空法の改正)

現在の法律では、空飛ぶクルマは航空法の規制対象となる可能性が高いため、耐空証明が必要となり、航空機やヘリコプターと同水準の規制がかけられてしまいます。
空飛ぶクルマの実用化に向けた研究開発を進めるためには、航空法を改正し、新規制を作成する必要があるでしょう。

インフラの整備

eVTOLの離着陸には、ヘリポートのような一定の離着陸場が必要になるほか、電動のため、一回飛行するたびに充電できる充電ステーションも多く必要になります。
安全性を確保するために、空中における障害物やビルなどの情報を受信・発信できるセンサーも不可欠です。また、狭い空域に多くの機体が飛び交うため、航空管制塔に代わるシステムも欠かせません。

安全性の周知

eVTOLには、自動運転車やドローン以上に高い安全性が求められます。
人工知能や自動運転などの新しい未知の技術に対しては必ずといっていいほど、反対する声が出てきます。ましてや空飛ぶクルマとなれば、SFの世界の話と感じて安全性に疑問を持つ人も多くいるでしょう。こうした疑問に対しては、実証実験などを通じて、技術面や安全面をどのように高めているのか、社会にとってなぜ必要なのかなどの情報をしっかり周知する必要があります。

バッテリー技術の発達

eVTOLは電気で動くため、長距離飛行などの長時間の稼働を実現するためにはバッテリー技術の向上が求められます。いかに軽くて高容量の電源を確保するかが、重要な技術課題の1つです。

開発資金の工面

eVTOLの研究開発には数百億円規模の資金が必要になってくるため、開発資金の調達方法も課題です。スポンサーや投資・出資に加え、公的な支援体制が整備されれば開発のスピードが加速するため、公的支援のしくみ作りが求められます。

編集後記

「空飛ぶクルマ」は、漫画や映画の中の話ではなく、すでに現実のものとなっています。
今後数年間で大きく進展する可能性があり、自家用車やタクシーのように街中の空を飛び回る日も、遠い未来のことではないのかもしれません。

しかし、eVTOLの開発や市場の成長には、さらなる技術開発や社会受容性向上の必要性など、課題が多くあるのも事実です。企業がこれらの課題に対処していくことと併せて、利用する私たちが新しい乗り物に興味を持ち、受け入れやすく発展を促しやすい環境を作ることも、eVTOLの今後の実用化に向けては欠かせないでしょう。

 

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2022.09.30