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ドローンを活用した災害対応のメリット・デメリットとは?事例も紹介

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ドローンを目にする機会は年々増えています。特にこの数年は、テレビCMや映画の撮影にドローンが使用されたり、オリンピックに登場したりと技術力の高さに驚いた方も多いでしょう。

しかし、ドローンを人命救助に活かそうと、災害現場での活用に注目が集まっていることをご存じでしょうか。

本記事では、災害時におけるドローン活用のメリット・デメリットを解説します。また実際に災害時の救助活動にドローンが活躍した事例もご紹介します。

ドローンとは

ドローンは「人が乗ることができない飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であっ て、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの」と定義されています。つまり人を乗せずに空を飛ぶ機体のことです。

最大の特徴は、小回りが効くことです。
ドローンの特性を利用して、空中からの撮影や測量、農薬散布など様々な産業分野での活用が進んでいます

今回は災害時の有用性や課題について詳しく解説していきます。

参考:https://www.mlit.go.jp/common/001202589.pdf

災害時におけるドローン活用のメリット・デメリットとは?


近年、日本では地震や台風、大雨といった自然災害によって様々な被害を受けています。
ドローンは、このような災害発生時に対応できるツールとして注目されているのです。

メリット

1.被害状況の迅速な確認や救助者の早期発見が可能

自然災害が発生した際、現場になかなか人が立ち入ることができないケースも多くあります。しかしドローンであれば空中を飛行して移動できるため、速やかに現場の状況を把握することができるのです。

また通常の光学カメラ以外にも、赤外線カメラを搭載することで人の体温を検知できるようになります。こうすることで、要救護者の捜索も早急に完了できるでしょう。

2.コストを抑えられる

ドローンは、ヘリコプターなどの有人航空機に比べて機体の本体価格やメンテナンス費用が安いのがメリットです。
整備、操縦者の教育にかかるコストも抑えやすいため、ドローンを導入するハードルは比較的低いといえるでしょう。

3.離着陸に空港などの広い場所は必要ない

ドローンは、有人航空機に比べて離発着場所の応用が利きます。早急に対応できるのが強みです。
災害発生後の初期対応として活用できるでしょう。

4.ハザードマップ作成など情報収集ができる

ドローンは飛行エリアを俯瞰的に見ることができるので、ハザードマップの作成にも役立てることができます
写真や動画を撮影することはもちろん、広範囲を3D測量することができるので効率よくデータを取ることができるはずです。

デメリット・課題

1.天候により飛行の可否が左右する

ドローンは天候条件が飛行に大きく影響します。
ドローンを飛ばすときに気をつけなければいけないのが次の3つ。

上記のなかで最も注意が必要なのが風速。一般的に地上よりも上空のほうが風速が強いことが多いからです。

2.長時間の使用は難しい

一般的なドローンの飛行時間は10分~40分程度。何時間にもわたって稼働させるのは技術的に難しいのです。
ドローンに物資を搭載すると、機体重量が重くなるためさらに飛行時間が短くなります。

しかし近年では最大飛行時間が長い機体も開発されています。例えば、燃料を積んだタイプのドローンなどです。

3.通信環境を整備する必要がある

現在、日本国内でドローンを操縦する際に使用される電波はWi-Fiと同じ2.4GHzの周波数帯です。
複数の電波が飛び交うと通信状況が悪くなる傾向にあります。他にも山間部など大きな障害物がある場所では電波が届かなくなる可能性もあるでしょう。

ドローンは飛行中に受信する電波が途切れた際、自動で帰還する機能が搭載されています。
災害時に活用する場合は、事前に設定を確認するのが重要です。

4.ドローンの運用管理をする人材育成が必要である

ドローンを災害対応で利用する場合、複雑な状況下で飛行させることが考えられます。最近ではドローンを完全自動運転させる技術も開発されています。しかし平常時の活用に限られるものがほとんどです。

刻一刻と状況が変化する災害時においては、手動で臨機応変に操縦できるスキルを持ち合わせた人材を備えることが必要でしょう。

ドローンの災害時活用事例

ドローンの災害活用事例1.熊本地震

2016年に甚大な被害をもたらした熊本地震。
山岳部では土砂崩れや地割れにより道路がふさがり車が通行できませんでした。

そこでドローンを活用したことで、3次元で被災状況を把握することができたのです。ただ空撮をするだけではなく、地割れした箇所をソフトウェア上に反映させる作業もスムーズに行えました。

有人航空機では飛行が困難な地上数十メートル地点から高精細な画像を取得できたことも、ドローンの強みが発揮された事例といえるでしょう。

ドローンの災害活用事例2.九州北部豪雨・秋田豪雨

2017年7月、九州北部豪雨や秋田豪雨災害で被害状況を把握する際にドローンが活用されました。
現地に派遣されたTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)によると、次のような報告があったようです。

「被災箇所の調査は速やかに概要を把握する必要があり、2次災害の危険性も伴うことから、ドローンによる調査が効率的」

このような事例から、ドローンは被災地の状況を迅速かつ安全に把握するのに有効であることが分かりました

参考:https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000704948.pdf

ドローンを使った捜索訓練

夜間の山岳地帯での遭難者捜索

2020年10月、北海道上士幌町の山林で、遭難者を想定した人形を夜間に見つけ出すという取り組みが行われました。
人形は体温に近い熱を発するよう設定され、山林に隠されています。

このような状況で活躍するのが赤外線カメラです。遭難者と周囲の温度を見分けることができます

また夜間のドローン飛行は目視での操縦が難しいです。そのため、あらかじめ飛行する山岳地帯の起伏や高度の情報をプログラムに入れて自動飛行モードで捜索

複数のドローン機体を交互に使用したことで、捜索範囲とデータを広げながら遭難者(人形)の熱源を発見することができました。またデータで示された場所に行くと、ほぼ誤差がなく人形を見つけることができたそうです。

このような訓練の結果、北海道上士幌町は自治体ではじめてドローンによる山岳遭難の夜間捜索を民間団体から支援を受ける協定を結びました。

参考:https://www.nhk.jp/p/ohayou/ts/QLP4RZ8ZY3/blog/bl/pzvl7wDPqn/bp/p5K2BOnKK1/

編集後記

自然災害は突然発生します。そしてスピーディーに状況を把握することが何よりも重要です。

解決しなければいけない課題もまだまだありますが、ドローンは不測の事態に対応するための十分な性能があります。

 

今後も災害時や救助活動でのドローン活用は進んでいくでしょう。





2022.03.06