ドローンは農業や災害対応、点検や測量、エンタメなど多くの分野で活躍する新しいテクノロジーです。
2022年、さらなる発展が見込まれるとして注目されているのがドローンによる配達サービス。
日用品や食料品などの物資をドローンによって運べるようになれば、従来よりも早く・効率的に配達が完了すると考えられるからです。
本記事では、物流サービスの現状や課題、ドローンによる配達・物流サービスのメリットとデメリット、ドローンを活用している企業事例などをご紹介します。
ドローン物流サービスとは?
ドローン物流サービスとは、文字通りドローンを利用してモノを離れた場所へ運ぶサービスのことをいいます。
日本政府は2022年にドローン物流を社会全体に浸透させる、「空の産業革命に向けたロードマップ2019」を掲げています。
まずは、ドローンの技術開発や環境整備を実施。そして過疎地域から徐々にサービスを導入していく方針です。
この数年、全国各地でドローンの実証実験が行われてきました。これらは、ドローン物流の安全性の確認や課題の洗い出しを行うことを目的に遂行されたものです。
今後、ドローン市場はサービス分野を中心に大きく成長していくと考えられています。
インプレス総合研究所が行った調査によると、2019年から2025年にかけてドローン市場規模は約3.5倍に拡大するそうです。
参考:https://research.impress.co.jp/report/list/drone/501125
ドローンを使ったサービス需要はさらに高まっていくでしょう。
ドローンビジネスの現状
物流分野におけるドローン活用ケースの拡大が見込まれている背景には、2022年度にレベル4飛行が解禁されることが大きく関係しています。
政府はドローンの飛行レベルを大きく4つに分類しています。
レベル2:目視内での自動・自律飛行
レベル3:無人地帯での目視外飛行
レベル4:有人地帯での目視外飛行
レベル4が解禁されることで、都市部など多くの人々が暮らすエリアでもドローンを自律飛行させられます。
これにより、ドローン物流サービス事業は急速に成長していくと考えられているのです。
物流サービスの現状
ここまでドローンの市場規模の拡大予測や、飛行に関する法整備が進んでいることについて説明してきました。
一方、物流業界そのものの現状や今後の成長予想はどのようになっているのでしょうか?
宅配便取扱個数は年々増加の一途をたどっています。
特にこの数年は、新型コロナウイルスが感染拡大した影響でオンラインショッピングの利用者が急増したことも要因の一つです。
このような社会背景があり、物流業界においては「お客様にいかに早く確実に商品を届けることができるか」というサービスフローの最適化が求められています。
効率的な宅配サービスが構築されることで、さらなる経済発展が見込まれるのです。
参考:「平成27年度 宅配便等取扱個数の調査及び集計方法」
https://www.mlit.go.jp/common/001139889.pdf
物流業界・物流サービスにおける課題とは?
しかし、そう簡単にサービスの質を高めることはできません。
現在の物流業界が抱える問題をご紹介します。
1.再配達の手間と効率の低さ
お届け先まで荷物を持ってきたのはいいものの、受取人が在宅でなければ一度持ち帰らなければいけません。そして再度届ける手間が生じます。
国土交通省が令和3年10月に行ったサンプル調査によると、宅配便再配達率は約11.9%。前年同月(約11.4%)より約0.5ポイント増、そして同年4月(約11.2%)と比べて約0.7ポイント増という結果になっています。
宅配ボックスや置き配など、再配達のムダを減らすための対策も徐々に広がってきています。
しかし不在配達のやり取りの中でトラブルが起こっていることも事実。
今後も宅配便の取扱個数は増え続けることが予測されているため、新たな施策を行うことが急務となっています。
2.交通渋滞による配達遅延リスク
次の問題は、交通渋滞です。物流量の増加に伴い、交通渋滞が慢性的に起こっています。
交通渋滞により荷物を指定通りの時刻から遅れて届ける場合、受取人が家にいるタイミングを逃す可能性があります。そして再度配達が必要になるという悪循環になりやすい状況ができあがっているのです。
また環境保護のため、トラック輸送により排出されるCO2量を削減していくことも対策しなければいけません。
3.ドライバーなど従業員の確保困難
物流業界では、取り扱う荷物量に対してドライバーの数が足りないという問題も抱えています。
再配達や交通渋滞は、ドライバー業務の大きな負担となっているからです。
また高齢化により現場の労働力が不足しているのも社会課題の一つです。
参考:https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000581.html
ドローン物流サービスのメリットとデメリットを解説
では、ドローンを使った物流サービスのメリット・デメリットについて詳しく解説します。
ドローン物流サービスのメリット
2.運搬時のコスト削減
3.過疎地への運搬が可能
4.災害時にも活用できる
ドローンは空を移動します。そのため目的地まで直線的なルートを確保することができ、スピーディーな荷物の配送が可能です。
道路を利用しないため配達する荷物の量によって交通渋滞が引き起こされる心配もありません。
空を使った配送手段といえば、飛行機やヘリコプターなどもあります。
しかし燃料やパイロットの確保、離着陸の空港やヘリポートの用意など、機体を動かすのに多大なコストがかかってしまうのが難点です。また少量の荷物やサイズの小さい商品の配達には不向きでした。
ドローンはこのようなコスト問題をミニマムに抑えることができます。また小さな荷物を個別に運ぶことも可能です。
また離着陸に広大なスペースを要しない点などから、過疎地への物資支援にも活用できると考えられています。
過疎地には高齢者が暮らしているケースが多いです。自力で買い物にいくのが難しくても、ドローンがあれば安全に配送できます。
災害が起こって人が外部から立ち入るのが難しいような被災地への物資運搬も、ドローンがあることで安全に行えるでしょう。
ドローン物流サービスのデメリット
2.ドローン墜落による人的被害リスク
3.ドローンや配達物の盗難事故リスク
4.配達可能な荷物重量に制限がある
ドローンを使った配達にはデメリットも存在します。
例えば、ドローンが配達中に破損・故障してしまうケースです。
空を飛行中に何らかのトラブルが起こり、墜落してしまうと商品を無事に運ぶことができません。
またドローンが飛行できるのは高度150mまでという規制がありますが、人がいる場所に墜落してしまうとけが人が出る可能性もあるでしょう。
目的地まで遠隔操作で飛行していると、ドローンや配達品が盗難の被害にあいかねません。
そして、ドローン配送に対応できる荷物には制限がかけられることも考えられます。ドローン機体を大きく上回るような家具などのサイズ感の荷物運搬は難しいでしょう。
現在デメリットとして考えられていることでも、今後のドローン技術発展により改善することもあります。
しかし、最も重要度が高いのは人に被害を及ぼさない環境整備の確立です。
ドローン配達サービスを行う企業事例
実用化に向けてはまだまだ課題のあるドローン物流サービス。
しかし、実際にドローンを使った配達サービスの提供を始めている企業もあります。
ドローン活用事例1.楽天のドローン物流サービス「そら楽」
一般向けのドローン物流サービスとしては世界初。
完全自律飛行のドローンを目視外飛行させて商品を届けます。
約一か月の間、ゴルフ場でドローン物流サービス「そら楽」が提供されました。
配送ポイントは一か所。使用されたドローン機体は2機です。
サービスの流れは以下の通り。
1.注文
2.注文受付
3.梱包
4.安全確認
5.ドローン配送
6.商品受け取り
注文には「そら楽」専用スマートフォンアプリを使用します。
このときユーザーは重量インジケーターで注文商品の総重量を確認できるのがポイントです。
ドローン発着所近くにて、注文管理・梱包処理が行われます。
飛行時の安全確保のため、上空と受取所周辺の風速・状況を常に観測しています。ドローン飛行ルート上に人がいる場合は、遠隔操作で音声アナウンスを再生。
ユーザーは、配送状況とドローンの飛行位置をアプリで確認できます。
ゴルフ場で期間限定で提供された本サービス。
楽天は、ドローン物流サービスのさらなる発展のために、蓄積されたノウハウを活かしていく方針です。
参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shinsangyo_kozo/pdf/009_06_00.pdf
ドローン活用事例2.KDDI、ドローン物流サービスの商用化へ
KDDIは、2023年度を目途にドローン物流サービスを商用化することを発表しています。
商用化にあたって最重要課題となっている安全面の確保については、航空事業に精通している日本航空(JAL)と協業することで体制を整えていく考えです。
KDDIが独自に開発したドローン運航管理システムと、JALが培った空の安全管理のノウハウを融合させます。
ドローン物流サービスの商用化に向けて、ドローンの運航を全国規模で管理できるシステムを築いていくとのことです。
参考:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC14D670U2A210C2000000/
ドローンによる配達・物流実証実験事例
ドローン物流サービスをより安全に行うため、実証実験を重ねてさらなる技術開発に取り組んでいる企業などをご紹介します。
ドローン実証実験例1.A.L.I. Technologies
A.L.I. Technologiesもドローンによる物流サービスの商用化を目指して動いている企業の一つ。2023年度以降の商用化に向けて、都市部・地方、山間部や住宅地といった様々な場所に対応するため、実証実験を重ねていきサービス体制の構築と強化に取り組んでいます。
高知県四万十町では、ドローンを利用した物流の実証実験を実施。
山間部で生活する高齢者への生活物資の定期配送に成功しています。
A.L.I. Technologiesは独自開発のドローン管制システム「C.O.S.M.O.S.」をもっているのが強みです。空間管理と飛行管理の両方を実現できるシステムとなっており、安心かつ安全なオペレーションを可視化することができます。
ドローンを使ったビジネス活性化に向けてさらにノウハウを蓄積していき、サービス提供準備を進めていく考えです。
参考
・https://newswitch.jp/p/30626
・https://ali.jp/cosmos/
ドローン実証実験例2.日本郵便、ACSL
2021年12月1日から東京都奥多摩町にて、ドローンと配送ロボットを連携させた郵便物の配送実験が行われました。
山間部の最深部にある集落に向けて、ドローンで郵便物を空輸。
荷物を配送ロボットに受け渡し、配送ロボットはお届け先の家の玄関まで運ぶという実験内容です。
ドローンによる空輸をサポートしたのはACSL。携帯電話ネットワークを利用して遠隔で運航指示を行いました。
山間に建てられた住居への配送は、往復で半日ほどかかるケースもあります。また冬場は路面が凍結してしまい車やバイクで荷物を配送するのが難しく、従業員が歩いて届けることもありました。
今回のようにテクノロジーを掛け合わせた配送手段が実用化されれば、従来の配送コストを大幅に抑えることが可能です。
実験に携わったACSLは、さらなる技術開発を進めて社会実装に取り組んでいきたいと述べています。
参考:https://drone-journal.impress.co.jp/docs/special/1183993.html
編集後記
2022年以降、ますます注目度が高まっていくと考えられているドローン物流サービスについて解説しました。
現状の物流業界が抱える課題を大幅に解決してくれるドローン。
今後、私たちの生活にどのように浸透していくのか楽しみですね。
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