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【ドローンパイロットが解説!】ドローンを活用した太陽光発電所の点検方法とは?②

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前回の記事は、以下内容で終了しておりましたので、本記事では続きを解説します!

しかし、物体が出す温度を可視化する赤外線カメラの映像を解析するためには、〇〇を知らないとモニター画面に映る温度の嘘に騙されてしまいます。
それはなんでしょうか?

▼前回の記事はこちら

【ドローンパイロットが解説!】ドローンを活用した太陽光発電所の点検方法とは?①

 

 

 

 

赤外線カメラに写る映像の特徴

だいぶ古い話になりますが、1987年に公開された映画「プレデター」という映画をご存知ですか。プレデターは地球外生命体で、赤外線カメラでしか姿をとらえられません。また、プレデター自体は赤外線情報を見て獲物を捕まえます。

もしこの様なエイリアンが地球に来たら皆さんはどのようにして逃げますか?

逃れるためには赤外線カメラに写らなくなる必要があります。

映画ではどの様にしたでしょうか?

主人公は、体中に泥を塗り体温を下げ、周辺環境と同じ温度にすることで、発見されにくくしました。

また火を燃やしてかく乱しました。では話は変わり、皆さんの住んでいるような環境ではどのようにすれば隠れられるでしょうか?

ガラスやアクリル板の裏に隠れなければいけません。

ガラスやアクリル板ごしでは、それ自体に光や熱が反射するので裏にある熱源は感知しにくくなります。また私が実験しましたが同じ要領でビニールを被ると赤外線カメラの映像では見えなくなります。ただ、サランラップはダメでした。密着している為、温度がすぐに伝わるようです。

話が脱線したように思われるかもしれませんが、実は赤外線カメラに写る映像の特徴を、プレデターを例に書きました。

ポイントは”反射”です。では反射とは何でしょうか?

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例を挙げると、陶器の湯飲みとステンレスのマグカップにお湯を入れます。

赤外線カメラで撮影すると、陶器の湯飲みはお湯が入っているところまでは、赤くなります。

ステンレスのマグカップが接する机のところが赤くて後は、青色や黄色で人の形が見えます。全然お湯が入っている感じがしません。

 陶器の湯飲みを触ると熱いです。ステンレスのマグカップは、触れると陶器の湯飲みよりも熱く火傷しそうです。

先ほどの赤外線カメラではステンレスのマグカップは30℃ぐらいの表示でした。なぜこのようなことになるのでしょうか。
それは、物体の「反射」による影響によってこのようなことが起こります。

陶器の湯飲みは、反射が少なくその物体が発する温度をほぼそのまま放射します。そのため、正しい温度(赤外線情報)が投影されます。

ステンレスのマグカップは、よく見ると周りの風景が写りこんでおり、その写り込んだ物の温度が表示されています。人の形が写っているところは、私が写り込みその温度が表示されていました。

唯一、ステンレスのマグカップと机の接点が机の素材の関係で反射が少ない為、正確な温度が表示されました。

このように、反射により正確な温度が表示されない事があります。

必ずしも正確な情報ではないので騙されないように気を付けましょう!

 

現在、赤外線カメラを搭載したドローンで一番業務として活躍が期待されているのが、太陽光発電所の点検業務です。ただ、実際ドローンを飛ばして赤外線カメラで計測する際、カメラ・撮影について良く理解しておかなければなりません。

太陽光モジュールにどの角度で撮影をするか、撮影時のドローンのスピード、高度の設定、カメラ設定などの値の調整など様々な要素があります。

物体の熱の反射や吸収率を知ること、同じ素材でも表面の加工方法で温度の見え方が違うこと、操縦者は知識として知り対象物を撮影しなければ間違った情報をお客様に提示してしまうことになります。

また、現場で赤外線カメラを取り扱う際は太陽光に向けて絶対に飛行してはいけません。高価なゲルマニュームレンズの赤外線カメラが壊れてしまいます。

Apple Music

設定時の画像の保存方法は、必ず温度情報が保存できるフォーマット(R-Jpg等)で保存することで、撮影した後の画像解析時に撮影した写真から温度情報を確認することが出来ます。

点検業務では、手動飛行できめ細かな点検を行う重要性もありますが、広い面積を正確に飛行させるには、自動飛行が適しています。

飛んでいる間、操縦者は余裕ができるため、画面から得られる情報を把握できます。そのため、不具合個所の見落としが少なくなりますし、障害物や鳥の接近等について余裕をもって対応可能となりました。 

再生可能エネルギーの法律で2017年4月に施行された改正FITにより、「入札制度の導入」「複数年度の調達価格等の設定」メンテナンス(O&M)義務化」等が導入されることとなりました。

これは私の肌感覚ですがまだまだこのメンテナンスや点検を年間計画的に行なっている発電事業者は少ないと思います。

国も法律として決めたことをしっかりと守っていただけるようにすれば良いのですが、既に法律が施行されてから5年になります。決められた通りに保守点検を行なっていない発電所事業者へ指導が入り始めると思います。

従来の点検より早く、不具合個所が特定しやすいドローンを使った点検業務は、重宝されます。

点検業務で赤外線カメラを導入して知りたい情報は何でしょうか? 

赤外線カメラは測定対象の温度を測ります。

異常発熱箇所は、他より著しく温度が高い表示で判断できます。建築では、雨水や漏水による罅(ひび)や剥離(はくり)カ所は温度が低くなり、判断できます。

この様に、赤外線カメラは目では見えない異常個所を熱情報により発見し、メンテナンスを可能にしてくれます。

今までは、電気工事では低所にある配電盤や配線等、建築では3mぐらいまでの壁面等の検査は容易でしたが、高所になると、足場等を設置する費用と手間が発生していました。

また、転落の危険もあり毎年数人がケガをしたり亡くなってしまったりしております。

ドローンの登場ですべてではありませんが多くをカバーすることができ、安全に正確な点検作業が行うことが可能になります。

ただし、赤外線カメラを搭載したドローンは点検業務には必需となります。

数年前は、赤外線カメラを搭載したドローンは数台しかありませんでしたが、2021年から増え始め、値段は当初と比べて半分以下になりました。

各メーカーが出してきたということは、 点検や防災、監視や捜索に必要だという需要があるからです。赤外線カメラは、物体が発している熱を見ることができ、我々が目には見えない情報をみられます。

今後、量子カメラ等の開発や色んな角度から物を見ることができれば、点検や自動運転飛行で大活躍してまいります。

ただ、カメラを扱う上で、基本的な仕組みや原理は知っておく必要が使用者側にはあります。映し出した映像を目で見て何を表しているのか理解しておかないと間違った判断を現場でしてしまいます。

ドローンをただ飛ばして、写真を撮影できればよい、というわけではないのです。 

 2022年に購入できる赤外線カメラ搭載のドローンはこちらです

DJI M30T(赤外線モジュールDJI自社製)

DJI M300RTK 搭載のH20T・H20N (赤外線モジュールDJI自社製)

DJI M200シリーズ 搭載のZENMUSE XT2

DJI Mavic 2 Enterprise Advanced (+RTK)  640×512  (赤外線モジュールDJI自社製)

Parrot ANAFI USA  320×256

Autel Robotics. Evo II Dual 640T

Skydio X2 FLIR 320×256  

DJI社は、2020年から独自の赤外線システムを取り入れました。他のメーカーは、FLIR 製(米国)を採用しています。

ぜひ赤外線システムの基礎を身につけてドローン点検を行いましょう。

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2022.07.07