ドローンにおける農薬散布の規制緩和と今後の展望【2019最新版】

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農業現場における無人航空機(ドローン)の活用。航空法や自治体ごとの条例など、さまざまな規制がありながらも、ニーズは年々高まりを見せています。

なかでも、ドローンによる農薬散布は大きな注目を浴びているのが現状です。この背景には、ドローンを導入することによって得られる、農作業の効率化や低コスト化といったメリットがあげられます。また、無人ヘリコプターと比較してドローンが安価であり、操縦への難易度が低いこともポイントです。多くの農業現場で課題となっている、担い手不足や高齢化による労働力不足。これらをカバーできるという点で、さらなる注目を集める農業用ドローンは、農林水産省でもその活用が推進されています。

この背景を受け、2019年7月末には、これまで制定されていた農薬の空中散布における技術指導指針が廃止されました。さまざまな技術開発や実証実験を経ながら、ドローンは、今後も農業現場でさらなる活用が見込まれています。

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ドローンによる農薬散布の規制緩和

これまで、農業現場におけるドローンは、2015年12月発出の『空中散布等における無人航空機利用技術指導指針』をもとに活用されてきました。しかし、労働力が減少している農業現場では、無人ヘリコプターと異なり、低価格かつ容易に操縦できるドローン導入への機体は高まる一方です。

そこで、農林水産省では、『空中散布等における無人航空機利用技術指導指針』が2019年7月末日付けで廃止されました。

技術指導指針廃止後の手続き

この技術指導指針廃止により、農林水産省の登録代行機関(民間機関)による機体やオペレーターの代行申請が廃止されました。今後は、国土交通省による承認に一元化されることで、手続きがこれまでよりも簡素化されます。一方、「審査要領」において代表者が複数の申請者を取りまとめ、国土交通省に代行申請を行なうことは可能とのことです。

また、これまではドローンによる農薬空中散布において、国や都道府県に散布計画を提出する必要がありました。しかし、今後はその報告も不要とのこと。散布区域周辺への情報提供を前提に、散布計画の提出が求められないことになりました。

また、農薬散布の際に留意すべき飛行の安全確保については、国土交通省のホームページで『空中散布を目的とした飛行のマニュアル』が公開されています。これは、既存の航空局標準マニュアルに「補助者配置義務を不要とする要件」と「目視外飛行の要件」などが加えられたものです。このマニュアルに則って空中散布を実践する場合には、飛行の許可承認申請書に必要な添付書類の一部が省略されます。

補助者の配置を不要とする場合

この場合、飛行する農地の周辺に人や車両への衝突を避けるための「立入管理区画」を設けることが求められています。この「立入管理区画」は、「位置誤差」「落下距離」を合算したうえで、ドローン落下の可能性がある範囲として飛行区域の外側に設定します。「位置誤差」「落下距離」は、それぞれメーカーが保証する数値を参照して設定することが基本です。メーカーの明示がない場合には、飛行マニュアルに掲載されている数値をもとに設定を行ないます。

夜間や目視外での農薬散布を行なう場合

審査要領では、夜間飛行や目視外飛行などにおける各飛行形態に応じた安全対策が求められています。審査の際には、この安全対策が適切に設定されているか否かが重要なポイントです。さらに、『空中散布を目的とした飛行のマニュアル』にも、安全な飛行を確保するために必要な体制が記載されています。

ドローンによる農薬散布の現状

2016年に制定された『農薬を散布する小型無人飛行機(ドローン)操作の認定制度』において、初年度である2016年8月の技能認定操縦者は155名。約3年後となる2019年6月現在では、50倍に近い7,232名と劇的に増加しています。さらに、飛行状況の把握や非常時の対応に向けた機能など、操縦者や操縦補助者の役割をサポートする機能が飛躍的に進歩しています。たとえば、自動操縦や高度維持、飛行経路の逸脱防止、緊急回避など、さまざまな機能が充実した高機能・高性能なドローンが次々と市場にお目見えしています。

一方で、農薬の安全かつ適切な使用を順守していくため、農薬の空中散布に係る安全ガイドラインが2019年7月30日付けで発出されました。このガイドラインは無人ヘリコプターとドローンそれぞれで策定されており、農林水産省のホームページ上で確認することができます。(『無人マルチローターによる農薬の空中散布ガイドライン』)

たとえば、事故が発生した際の報告。現状、ドローンの農薬散布による事故が発生した場合は農林水産省、航空安全に関する事故の場合は国土交通省への報告がそれぞれ義務づけられています。新たに策定されたこのガイドラインには、報告の趣旨が明記されるとともに、報告漏れがないよう国土交通省への報告も明記されています。

農業用ドローンの普及計画

農業現場における安全かつ適切なドローン活用推進に向け、農林水産省では、農業用ドローンや利用技術の普及拡大に向けた計画が策定されました。(農林水産省『農業用ドローンの普及拡大について』)さらには官民協議会を設立し、会員を対象に農業用ドローンにまつわる先端技術の情報や安全に関する知見の提供、実証活動のPR、情報・意見の交換・収集といった活動を進めています。

普及計画では、「農薬散布」「肥料散布」「播種(たねまき)」「受粉」「収穫物運搬」「センシング」「鳥獣被害対策」の7つの利用分野別に目標が設定されています。

農薬散布

目標は、2022年までに散布面積を100万haまで拡大させること。近年、農薬散布用ドローンは大豆、そば、麦類といった土地利用型作物を中心に利用が急増しており、屋外の畑で栽培する露地野菜や果樹などのニーズも高まっています。そのため、ドローン用農薬の登録拡大が急務とされている状況です。

肥料散布

この分野では、生育ムラをなくすことによる収集・品質の向上が期待されています。農薬散布ドローンとの共用ができることも、作業効率の向上および低コスト化が望める大きなポイントといえるでしょう。現状では、農薬散布に適した資材開発や技術実証などが課題となっています。

播種(たねまき)

すでに、鳥取県日南市をはじめ一部の農業法人やJAにおいて、農業用ドローンによる直播栽培の活用および実証が実現しています。高齢化が深刻な中山間地帯の農業において、負担を大きく軽減していくことにつながるのではないでしょうか。

受粉

現在、東光鉄工(秋田県大館市)と青森県立名久井農業高校が共同し、リンゴやサクランボの受粉を目的とした実証実験が進行中です。この実験は、花粉に蒸留水、砂糖、紅花色素を混ぜた溶液をドローンを用いて花の近くに噴射するというもの。これまでに結実率40~50%という成績が記録されており、実用化に向けた取り組みが積極的に行なわれています。この実証実験については、青森県立名久井農業高等学校のホームページにも詳細が報告されています。

収穫物運搬

この分野でドローンの実用化が進めば、農業現場における労力が大幅に軽減されることでしょう。現状は技術の開発・実証段階であり、重量物を運搬した際の機体の安定性向上や、長時間・長距離飛行に耐えうるバッテリーの改良、ハイブリッドエンジンの開発などが課題としてあげられています。

センシング

農業用ドローンにおける「センシング」とは、ドローンに搭載した高精細カメラなどで撮影した画像により、作物をリモートで検知すること。これにより、収穫適期の判断や病害虫の診断など、作物の生育におけるさまざまな効果が期待できます。現在はさまざまな技術が実証中であり、ヤマハ発動機株式会社(静岡県磐田市)では民間企業3社と提携し、2019年3月には農薬散布とセンシングをパッケージにした農業用プラットフォーム『YSAP』が発表されています。

鳥獣被害対策

現在は、まだ研究・実証の段階です。ドローンに高性能な赤外線カメラを搭載し、イノシシやシカといった鳥獣の生息域や生息数および行動状況などを撮影した画像によって把握していくというもの。従来の環境調査では現地踏査や目視確認、被害地域の地図化といった作業に大きな負荷がかかっているというのが現状です。ドローンによる鳥獣被害対策が普及することで、労力と時間を大幅に軽減していくことが期待されています。

編集後記

農業現場で深刻な課題とされてきた、担い手の減少や高齢化による労働力不足。低コストかつ短時間でこの課題を解決していく突破口として、ドローンの技術は今後もさらなる飛躍を遂げていくことでしょう。

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