道路、トンネル、橋梁、ダム…インフラ点検を支えるドローン

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政府や自治体、民間企業などあらゆる団体から強い期待が寄せられている産業用ドローン。国内のインフラを支える重要なカギとして、多くの現場で活用されています。

たとえば、風力発電所やダムといった大規模構造物の保守点検。あるいは、老朽化したトンネルやビルの調査。さらには、航空写真測量。産業用ドローンは、人々の生活や経済活動を守るためにさまざまな現場で重宝されています。

 

インフラの老朽化が原因で発生した国内史上最悪の大事故

国内の高速道路やダム、トンネル、橋梁などの多くは高度経済成長期につくられました。これらは建設から40年以上が経過し、老朽化が進んでいます。

実際に、インフラの老朽化により巻き起こった事故を振り返ってみましょう。2012年12月に起きた「笹子トンネル天井板落下事故」は、ご存知の方も多いのではないでしょうか。この事故では、270枚のトンネル天井板が130メートルもの区間にわたって落下。火災の発生や煙除去装置の故障により救助が難航し、9名が死亡する大惨事となりました。国内の高速道路上において、史上最多の死亡者を出す事故とされています。

 

政府による再発防止策の立案とドローン導入の推進

この事故を受け、国土交通省では再発防止に向けた調査・検討委員会を発足。現地調査や緊急点検を実施し、笹子トンネルにおいて設計、材料、施工など複数の問題があったことが確認されました。

さらには、天井板を固定する金属ボルトの打音検査を2000年以降実施していなかったことも発覚しています。こうした背景から、2014年にはトンネルや2メートル以上の橋梁を5年に1度の頻度で点検することが法律で義務付けられました。

しかし、トンネルや橋梁などでの調査・点検は高所かつ危険な作業を伴うため、莫大な費用がかかります。このことから、予算や人材の確保に苦しむ自治体は決して少なくないというのが現状です。「限られた予算と人員で正確かつ安全な調査・点検を実施したい」という思いを持つ人々は少なくないでしょう。

そこで、近年ニーズが高まっているのが産業用ドローンです。国土交通省では『i-Construction(ICTを全面的に活用した土工)』を推進しており、建設現場においてドローンが積極的に活用されています。『i-Construction』とは、ICTの活用によって生産性の向上を目指すべく設定された建築業界の新基準です。なかでもドローンには大きな期待が寄せられており、赤外線点検や3次元測量など、建築業界で積極的に活用されています。

 

インフラ現場にドローンを導入するメリット

インフラの建設や点検においてドローンを導入するメリットは数多くあります。たとえば、高所での作業であれば、本来の作業に取りかかる前に頑丈な足場を組む必要があるでしょう。人力での作業となるため、転落などの危険も常に付きまといます。

しかし、小型で安定的な飛行ができるドローンを活用すれば、高所や人が立ち入りづらい入り組んだ場所でもスムーズかつ安定的な作業が可能です。小回りの利くボディで柔軟に空撮したり接写したりできて、人による目視や有人航空機での撮影よりも時間やコストを抑えられることが大きなメリットといえるでしょう。

インフラ点検業務においては、2018年2月、三菱地所が東京・丸の内で実証事件を行なっています。実験場所となったのは、丸の内の地下にあるトンネル内部。そこに自律飛行型のドローンを活用し、人力で担っている点検業務の一部をゆくゆくはドローンに置き換えることが目的です。

点検の頻度は2ヶ月に1度で、現在は作業員が目視で配管やトンネルの破損や漏水、設備の腐食や異音などを目視で点検しています。しかし、トンネル内部は狭小であり、目視による確認では見落としなどの不安が残ります。さらには、内部に空調設備がなく、作業員への負担が大きいことが課題です。

この実験は小型ドローンをトンネル内で自動飛行させ、配管や壁面などを撮影して異常を発見し、撮影した映像を拠点に伝送するというものです。ドローンには障害物検知用のレーザーセンサーやカメラモジュールを装着し、現在地の把握と障害物の自動回避を可能としています

一方、トンネル内はGPSが使用できず、地磁気の安定計測が難しいなどの課題も残っているようです。実業務での導入は未定ですが、この実験を糧に点検品質や作業効率の向上に向けた取り組みがさらに活性化されていくのではないでしょうか。

 

大規模構造物や高所の点検に大活躍!プロペラガードを搭載した産業用ドローン

ここで注目しておきたいのが、エンルートの建設用ドローン『PG700』です。『PG700』は機体および本体にプロペラを保護するガードを備えており、複雑な構造物の細部に入り込んだ点検ができます。対象物との距離を一定に保てるため、人が立ち入りにくい狭い場所や入り組んだ場所、トンネル内などでも安全に点検ができることが強みです。撮影中のブレや揺れを抑えるカメラジンバルは、機体の上部または下部に搭載が可能。構造物を緻密に検査しながら至近距離で撮影し、サビや腐食などの問題を発見できます。

 

トンネル発破の適切性を見極める!ドローン×AIの自動判定システム

さらに山岳トンネル工事においても、ドローンの活用が期待されています。トンネル発破の適切性を自動判定するシステム『ブラスト・アイ』は、戸田建設とRistの共同開発。ドローンで撮影したデータをAIで自動判定するというものです。

中硬質岩の山岳トンネル工事では、約1~2メートルごとに発破掘削を行ない、トンネルを施工していくという流れです。そして、発破の適切性をその都度判定して次の発破パターンに活かしていかなければなりません。しかし、判定基準のひとつである飛び石の形状確認は適切とされる形が曖昧です。そのため、これまではベテランの作業員に判定作業が一任されてきました。

こうした判定作業に『ブラスト・アイ』を活用できれば、AIの自動判定により、経験の浅い作業員でも次回の発破パターンに活かすためのデータを適切に入手することが可能です。山岳トンネル内では、先に触れた三菱地所の実証実験と同じくGPSが使用できない、路面は変化に乏しい入り組んだ箇所が連続しており特徴点が掴みづらいといった問題点があげられます。現場実証では特徴を比較的掴みやすいトンネル上部を飛行し、特徴点を確実に捕捉するために高輝度LEDライトやステレオカメラを搭載させたようです。

 

時間と費用を大幅カット!測量業務もドローンにお任せ!

従来の測量業務では、測定機器を用いて現地の地形や地物を測定し、地形図をCADでデータ化するという方法、あるいは有人航空機で航空写真測量を行なうというのが一般的でした。こうした測量分野においても、近年ではドローンが積極的に導入されています。

ドローンを使った測量の最大のメリットは、時間と費用を大幅にカットできるという点です。従来の有人航空機を使用する測量では、業者への依頼や日程調整、高額な費用の捻出などが課題とされてきました。

しかし、ドローンであれば講習を受けた社員が操縦できるため、外部の協力を仰ぐことなく自社の社員だけで測量を完結させられます。事前に設定しておいたルートを自動飛行し、空撮することも、撮影データをスピーディーに解析して三次元地形モデルを作成することも可能です。持ち運びも簡単で、有人航空機よりも低空から撮影できることにより、高解像度な撮影データを得られることも大きな強みといえます。

 

編集後記

人々の生活や経済活動に欠かせないインフラ領域は、決して永続的な存在ではありません。長く活用されるものだからこそ、老朽化や災害によるダメージをいち早く見極め、整備や修理をしていくことが大切です。これまで膨大な時間や莫大な費用をかけていた点検業務をドローンに置き換えれば、より品質や作業効率を高めていくことができるでしょう。

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