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NECの開発中のドローンが試験飛行中に制御を失い、2週間以上も行方不明の状態が続いています。
NECは行方の解らないドローンの事業所周辺の捜索を続けており、近隣でビラを配ったり、インターネットで呼びかけるなどして捜索を続けています。
NEC : 公式HPより『ドローン紛失についてのお詫びと発見時の対応のお願い』
ドローン行方不明の原因は、操作ミスのほか部品の故障や、ソフトウェアの故障など、様々な可能性が考えられていますが、サイバー攻撃を受けたのではないかという声もあがっています。
懸念されるドローンの攻撃利用
今まで日本では、サイバー攻撃を受けたドローン事故の事例はありません。しかし2018年には、ベネズエラのマドゥロ大統領が首都での式典の際に、爆弾を搭載したドローンによって暗殺されそうになったという事例があります。この際は2機のドローンが暗殺計画のために使用されていました。
10月にフィンランドのヘルシンキで開催された「Drone 2019 Congress」では、ドローンを巡るリスクや、ドローンがサイバー攻撃のターゲットになる可能性、それと同時にドローンがサイバー攻撃のツールになり得る可能性が指摘されました。
フィンランドのユバスキュラ大学のマルティ・レヒト教授はこのカンファレンスの中で「無人飛行機やドローンはDDoS攻撃をはじめとするさまざまな悪用コードのターゲットになり得る。同時に、ドローンは敵情視察や監視、スパイの手段としても非常に有効だ」との意見を述べました。
ドローン乗っ取り1秒未満で完了
セキュリティ専門家のジョナサン・アンダーソン氏は、ソフトウェア無線、ドローンのコントローラー、マイクロコンピューターなどの電子機器を使用し、短時間で簡素な乗っ取り専用のデバイスを作成しました。
この結果、デバイスを乗せたコントローラーは1秒にも満たない11ミリ秒で他人のドローンを乗っ取りました。
©︎kaspersky
また、ドローンを操作するスマートフォンをマルウェア(悪質なコードやソフトウェア)に感染させ、操縦者のスマートフォンに偽のドローンアプリケーションをインストールさせる事も容易に可能との検証結果が。
感染したスマートフォンと同じネットワーク内に入ってきたドローンに無線LAN経由でマルウェア感染させることもできるため、技術のある人にとってはドローンのセキュリティを破ることは難しいことではありません。
国外ではハッキングツールを搭載したドローンが500ドル程度で販売されていた事例もあります。
ドローン安全利用のため万全なシステム対策を
9月にドローンを利用し、サウジアラビアの石油施設へ攻撃が行われたという衝撃的な事件が起こりました。石油施設に落とされたのは手榴弾をくくりつけた小型の民生用ドローンでした。
今後、国内でもドローン利活用が進んでいくにあたり、ドローン単体はもちろん、地上システムなども含むシステム全体としての対策が安全で安心なドローン活用に不可欠だとされています。
国土交通省は航空法や小型無人機飛行等禁止法などドローンの飛行ルールを定めている他、ドローンの安心で安全な操作環境の確立や、セキュアな業務活用を目指任意団体である、セキュアドローン協議会が「ドローンセキュリティガイド」を公開しています。
ドローンはエンターテイメントのみならず、農業やインフラ点検、離島や山間部への物流など、日本の少子高齢化社会を支える重要なピースになる可能性を秘めています。
今後も様々な領域でドローンの産業活用が広がっていくことを踏まえると、安全を確保する制度設計が重要な鍵となります。
編集後記
ドローンの利活用が進む中で、懸念されているのがドローンの乗っ取りなどのサイバー攻撃。安心で安全なドローン利活用のために、しっかりとしたシステム対策が重要になります。また、冒頭部分で触れさせていただいたNECのドローンの行方も気になるところです。もしも手がかりになる情報をお持ちの方はNECさんにご連絡をお願いします!
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