点検・検査・空撮・調査などドローンの社会実装が始まってきた今日のこの頃ですが、インフラ点検や船舶検査など必要なデータを取得するには非常にレベルの高いドローン操縦技術が必要となります。FPV(First Person View)と呼ばれる機能を用いてオペレーティングするケースが多いこの業界。
近年、空撮業界ではレース用ドローンでの撮影も主流になってきており、FPVを用いる機会は増えてきております。
しかしこのFPVでのドローン操縦をするためには国家資格を取得する必要があります。
それは、
「第4級アマチュア無線技士(本記事呼称:アマチュア無線)」
「第三級陸上特殊無線技士(本記事呼称:三陸特)」
です。
とは言ってもこの二つの違いについて中々分かりにくいので、この記事にまとめてみました。ぜひ参考にしてください。
もくじ
アマチュア無線と三陸特の違い
まず、そもそもこの二つに共通するのは両方とも”特殊な無線を使用するために必要な資格”、”資格取得後に無線局免許状を申請する”ということです。
では、二つの違いはなんでしょうか。実はとてもカンタンです。
アマチュア無線は“プライベート”での使用を目的とし、三陸特は“仕事”での使用を目的としているということです。
アマチュア無線4級とは
アマチュア無線4級は、5.7GHz帯~5.8GHz帯の無線電波を発するドローンを操縦するにあたり必ず取得しなければならない国家資格です。正式名を「第四級アマチュア無線技士」といい、略して四アマと呼ばれることもあります。アマチュアという名前の通り、あくまでも趣味やプライベートな利用での無線使用を許可する資格です。
日本の電波法では、5GHz帯(5.7GHz帯~5.8GHz帯)の無線電波の無許可・無資格での使用を禁じています。一方で、ほとんどのドローンは電波法の範囲内の無線電波しか使用しません。
5.8GHz帯の無線電波を使うドローンとして代表的なものはレース用ドローンなどが挙げられます。
言い換えるなら、アマチュア無線技士4級の資格は、主にドローンレースに参加したい人、レース用ドローンで遊びたいという人が取得するべき資格であると言えるでしょう。
上記の内容であれば、プライベートな利用のためアマチュア無線資格で問題ありません。
第三級陸上特殊無線技士とは
5.7GHz帯~5.8GHz帯と、周波数はアマチュア無線4級と一緒の範囲ですが、こちらは業務利用する際に必要な資格です。
アマチュア無線4級のみを保有している状態で5.7GHz帯を業務利用をすると、電波の目的外使用となり電波法違反となります。
5.7GHz帯~5.8GHz帯を使用するドローンを業務で使いたい場合には、三陸特と呼ばれる第三級陸上特殊無線技士を取得する必要があります。趣味用のドローンレースで使う機体と同じものを使う場合でも、業務で使う場合には三陸特が必要となるということです。
プロフェッショナルドローンオペレーターとしては操縦技術を研磨していく必要がありますのでトレーニングは”プライベート”利用になりますからアマチュア無線も持っている必要があります。
アマチュア無線4級の取得方法
アマチュア無線4級のライセンスの取得には2つの方法があります。
①国家試験に合格する。
②一般財団法人日本アマチュア無線振興協会(JARD)が実施する「養成課程講習会」を受講し、その修了試験に合格する。
国家試験自体の難易度はそこまで高くないとされているので、国家試験での取得がおすすめです。小学生も受験して合格している方もおりますし、過去問を解いていれば合格する、とも言われているようです。
一方で、本記事を読んで、国家試験での合格が難しそうと感じられた方は、養成課程講習会を受講してみると良いでしょう。
また本記事は、主に①の国家試験を経由でライセンス獲得を目指す方に向けて解説しています。
国家試験の受け方
ここでは、国家試験の受験方法について細かく確認していきましょう。
国家試験は国家機関である総合通信局に代わり、公益財団法人日本無線協会が運営しています。また、特別な受験資格はないため誰でも受験することができる試験です。
・当日受付試験
・予約制
の2つの受験方法があります。
※当日受付試験は本部(東京都中央区晴海3丁目)のある東京でしか実施されないので注意してください。
今後の試験開催日・受験会場は日本無線協会のホームページより確認をしてください。
アマチュア無線4級 持ち物
4級の試験手数料は5,013円です。その他にも別途費用がかかります。(試験申請書の用紙代120円、等)詳細は日本無線協会のホームページをご確認ください。
持ち物としては、縦3.0cm・横2.4cmの写真を2枚(試験用と免許用)と筆記用具が必要です。また、氏名・生年月日を証明する書類(住民票等)の添付、もしくは住民票コードを記載する必要があるので、それらも準備しておきましょう。
アマチュア無線4級の出題傾向
出題内容としては、無線工学と法規について出題されます。それぞれ、12問ずつ(計24問)出題されます。各科目で8問正解すると合格です。つまり、相対評価ではなく絶対評価で合否が決まるため、リラックスして受験してください。
また、解答は4択でマークシート形式です。
アマチュア無線4級の勉強方法
比較的難易度の低い試験だと言われる一方で、初見で合格することは難しいでしょう。そのため、ある程度の対策は必須であると言えます。目安としては、過去問を解いて合格点が取れるまでは対策すると良いでしょう。
対策本としては、以下のものが非常におすすめです。
この書籍に掲載されている過去問を丸暗記すれば合格は固いと考えられます。というのも、アマチュア無線4級の出題傾向として、だいたい24問中22問が過去問の使い回しであると言われているからです。
次に、下記サイトで最終チェックすると良いでしょう。過去問がランダムで表示される仕様なので、効率的に演習ができます。
第三級陸上特殊無線技士の取得方法
産業用ドローンの周波数は、「5.7GHz」。この周波数を業務で利用する場合、『第三級陸上特殊無線技士』と呼ばれる無線免許が必要です。
『陸上特殊無線技士』とは、総務省が定める国家資格のひとつ。試験科目は「無線工学」と「法規」で、多種選択方式によって行なわれます。取得方法は2種類あり、「国家試験」または「養成過程」を選択できます。
国家試験
まず、「国家試験」の試験日程は、6月・10月・2月の年3回。試験地は、東京・札幌・仙台・長野・金沢・名古屋・大阪・広島・松山・熊本・那覇です。
試験料は5,163円です。申請書は公益財団法人「日本無線協会」の各事務所および一般財団法人「情報通信振興会」で販売されており、用紙代は120円。申請書を郵送で請求する場合、用紙代(120円)と郵送代(84円)の合計額(204円分)の郵便切手を同封します。
申請方法は、「インターネット申請」、「郵送」、「協会の各事務所へ直接持参」のいずれかを選択可能。協会へ直接持参する場合、月曜日~金曜日の午前9時~午後5時までが受付時間です。詳細は、公益財団法人「日本無線協会」ホームページに掲載されている『特殊無線技士国家試験案内』のPDFをご覧ください。
養成課程
「養成課程」の受講料は、関東エリアの場合、2万2,650円。(エリアによって料金が異なる可能性があります。詳細は日本無線協会のホームページをご覧ください)講義から試験まで1日で行なわれるため、合格率が高いことが特徴です。講義は「法規」が4時間、「無線工学」が2時間で、毎月行なわれています。
申込期間は、講習日の2か月前~10日前まで。定員になった場合は期間中でも申し込みを締め切り、定員割れの場合は期間を過ぎても受け付けてくれる場合があるそうです。
申込方法は、「郵送」または「協会の各事務所窓口へ直接持参」。インターネットやFAX、電話などによる予約は受け付けていないそうです。
申込時には、写真や住民票などの書類が必要となります。詳細は、詳細は日本無線協会HPをご覧ください。 https://www.nichimu.or.jp/kousyu-yousei/index.html
編集後記
ドローンが注目されてきて、今では日本にたくさんのドローンオペレーターがいらっしゃいます。
その中でもプロのドローンオペレーターとして業務を行っていくには、人とは違う抜きんでた一芸のようなものが必要になってくるでしょう。
FPVドローンでのダイナミックな空撮ができれば、自分の映像の幅や可能性を広げてくれるでしょう。
また、FPVドローンは自分がドローンに乗っている感覚で操縦ができます。ゲーム感覚で操縦することができ、没入感も高く非常に面白いのでおすすめです。
皆さんもぜひアマチュア無線4級、第三級陸上特殊無線技士を取得してFPVドローンを活用していただけたらと思います。