全国で進む、災害時のドローン活用【最新事例と被災時の対応】

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操縦しやすく小回りがきくことから、災害対策で注目を集めているドローン。大きな災害が起きた際の状況把握や救助活動、復興を目的とした状況把握などに向けて、積極的に導入が推進されています。

神戸市東灘区の高校が災害対策にドローンを導入

兵庫県神戸市東灘区にある「深江浜町」。約120ヘクタールの海を埋め立て、1969年に誕生した人工島です。2019年8月31日現在、416世帯639名が暮らしており、8000名以上もの島内外の人々が働いています。

そんな深江浜町の課題は、津波や高潮などの災害が起きた際、安全な高台へ避難するルートが深江大橋しかないこと。深江大橋は、本土と深江浜町をつなぐ一本の橋であり、交通の便として重要な役割を担うとともに、災害発生時には住民の命綱となる重要な存在です。

兵庫県の予測では、想定し得る最大規模の高潮が発生した際には、深江浜町は1メートル以上の浸水が発生するとされています。また、南海トラフ地震では、3~4メートルの津波が約2時間で到達することが予測されています。

※参考資料:兵庫県『想定し得る最大規模の高潮による高潮浸水想定区域図』、兵庫県『南海トラフ巨大地震津波浸水シミュレーションの実施

こうした背景から、深江浜町では深江大橋までの安全な避難ルートや、橋周辺の混雑状況をスムーズに把握することが急務とされてきました。そこで、深江浜町にある東灘高校は災害対策におけるドローンの活用を提案しました。東灘高校は、1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災を教訓に、防災教育に力を入れていることでも知られています。

そんな東灘高校の声に賛同し、深江浜町に本社を構える東洋ナッツ食品が同校へドローンを寄贈。操作講習を受けた教員から生徒がドローンの操縦指導を受け、生徒会メンバーを皮切りにドローンパイロットの養成に取り組んでいくそうです。

災害が起きた際には、災害時の特例として国土交通省に飛行許可を得るとのこと。生徒が運動場や体育館などへ避難しているあいだにドローンを飛ばし、浸水・冠水している場所や深江大橋の状況を把握していく計画です。

ドローンを活用した災害対策事例

これまでにも、大規模な災害が発生した際にドローンが活用された事例が数多くあります。記憶に新しいところでは、2018年9月6日に発生し、最大震度7を記録した北海道胆振東部地震。自治体からの要請に応じてドローンチームを全国に派遣している損保ジャパン日本興亜(東京都新宿区)では、この北海道胆振東部地震でも被災地調査を行なっていました。これは北海道庁からの依頼によるものなのだそう。土砂により決壊の恐れがあった厚真ダムを飛行し、土砂崩れの現場映像を撮影したそうです。

損保ジャパン日本興亜がドローンを導入した当初の目的は、自社の保険契約者を対象とした損害調査のためでした。しかし、現在は災害対応まで活動範囲を拡大。130近い自治体と協定を結ぶなど、災害救助へのドローン活用に積極的な取り組みをしています。

被災状況調査時における航空法上のドローン

国土交通省東北地方整備局では、ドローンを用いた被災状況動画撮影のポイント集をホームページに掲載しています。これは、2016年8月30日に岩手県大船渡市に上陸し、北日本を中心に甚大な被害をもたらした台風10号の経験をもとに作成された資料です。この台風では、東北や北海道の太平洋側で記録的な大雨が発生しました。それにより、河川の氾濫や建物の浸水など大きな被害を受け、十名以上の犠牲者や行方不明者を出しています。

この災害を教訓に、発災直後の被災状況調査において、「被災箇所の発見および被災概況を把握し、復旧優先度・被害拡大の防止策等を検討すること」が資料の目的に据えられています。

対象とされているドローンの活用範囲は、「一定エリア内の被災状況の把握」「被災箇所の詳細な状況の把握」「人家や施設等に影響を与える地山部分等における影響の把握」です。

また、「全般的な被災概況の把握」については、防災ヘリコプターや測量用航空機、衛星などを活用することが前提とされています。しかし、「雲が低く垂れ込めている」「低い高度から詳細な情報を得たい」という場合には、ドローンが活用される可能性もあるようです。

資料では、「計画準備」「現地調査」「公開用映像作成」の3つのポイントについて、詳細な内容が掲載されています。ここでは、「計画準備」内、「安全の確保」の項目に記載されている状況別の留意事項を紹介します。

事故や災害が起きた際、「捜索・救助のために行なう無人航空機(ドローン)の飛行」は、規制の対象外とされています。また、被災状況の調査についても、人命の危機や財産の損傷回避を目的とした調査については、同じく規制の対象外になるとのことです。

人や物件から30メートル未満の距離で飛行させる場合

通常、「人や物件から30メートル未満の距離でドローンを飛行させる場合」には、承認を得なければならないことが航空法で定められています。しかし、被災状況の調査時においては、「飛行ルートや飛行時間を変更する」「第三者に30メートル以上の距離へ一時的に待避してもらう」など、状況に準じた慎重な判断が求められています。「第三者から30メートル未満の距離での飛行が必要になると予測された場合」には、「人や物件から30メートル以上の距離を確保できない飛行」で承認を得た実績のある操縦者およびドローンとの組み合わせが望ましいとのことです。

また、平常時ではないことから、建物より30メートル以内の飛行を回避する必要はないとのこと。しかし、窓やベランダ、屋上などから人が顔を出している場合には、状況に準じた対応が求められます。

FPVを用いた目視外飛行を行なう場合

被害状況調査時は、下記の条件であれば目視外飛行を実施することが可能であるとのことです。

・「目視外飛行を行なう個別承認を得ている操縦者と機材」の組み合わせ

・障害物や電波の状況、気象状況などに十分注意すること

また、災害時には見通しの良い場所が得られない可能性も考えられます。そのため、FPVで操縦者および操縦補助者からの不可視範囲を飛行する場合には、飛行ルート上に双眼鏡と無線通信機を持った観測員を配置することが望ましいとのことです。

夜間飛行における留意点

夜間飛行で撮影できる映像情報は、昼間に撮影できる映像情報と比較して限定的となります。そのため、夜間飛行の実施そのものを慎重に検討しなければなりません。しかし、夜間であっても赤外線カメラを搭載した被災状況の把握を行なう可能性があります。その際には、下記の条件が揃っていれば、機体を容易に確認できる範囲内でドローンの飛行が考えられるそうです。

・機体の姿勢および方向が正確に視認できる灯火を装備していること

・夜間飛行を行なう包括承認を得ている操縦者を配置できること

・第三者がいないこと

『ドローン基地局』による災害対応

2019年3月1日、KDDI(東京都千代田区)とKDDI総合研究所(埼玉県ふじみ野市)は、『無人航空機型基地局(以下、ドローン基地局)』の開発および実証実験に成功したことを発表しました。『ドローン基地局』の技術は、「災害時に被災者が所持する携帯電話の位置を推定し、捜索活動を支援する」というものです。

この技術では、被災エリア一帯にドローン基地局を飛行させ、Wi-Fi機能を用いて携帯電話からの信号を受けるたびに、ドローンの位置を記録します。同一の携帯電話から複数の信号を受けることにより、携帯電話のおおよその位置を推定できるそうです。

地震などの影響で倒壊した家屋や瓦礫の中にいる被災者の捜索は、一分一秒を争います。その際、多くの人が保有している携帯電話の位置情報を活用できれば、迅速な発見につなげることができるでしょう。

一方で、位置情報を収集するためには事前の認証処理が必要であり、契約者をあらかじめ特定しておく必要があります。

KDDIでは、今後、自治体や救助機関に対して本格的なヒアリングを行ない、『ドローン基地局』の災害時における本格的な活用を目指す構えです。

KDDIニュースリリース:災害対応向け『ドローン基地局』を用いた携帯電話位置推定技術を開発

編集後記

軽量で小回りが利き、操作が容易なドローンは、狭小な場所や危険を伴う災害現場において年々活躍の場を広げています。経済産業省から発表されている『空の産業革命に向けたロードマップ2019』においても、無人地帯での目視外飛行、そして有人地帯での目視外飛行に向けて段階的に環境が整備されていることもあり、ますます用途が拡大していくことでしょう。今後も、ドローンを活用しての災害対策から目が離せません。

災害地域に再び緑を!A.L.I.がドローンを活用した緑化プロジェクトを実施!

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