ドローンによるフードデリバリーを実施
KDDI、日本航空、JR東日本、ウェザーニュース、Terra Droneの5社は「東京都におけるドローン物流プラットフォーム社会実装プロジェクト」に参画したことを発表しました。今後はドローンサービスによる医薬品の配送や駅周辺のフードデリバリー・警備などのドローンによるビジネスモデルを検討し、実証実験を実施していくとのことです。
このプロジェクトは5社が「東京都におけるドローン物流プラットフォーム社会実装~ドローンを活用したまちづくり~」を東京都(委託先 : 株式会社三菱総合研究所)に対して提案し、2020年8月31日に採択されたものです。
アフターコロナの物流変革を見据えて

プロジェクトのイメージ図
コロナ禍では医療物資輸送のみならず、ステイホーム対策としての家庭向け物流需要の急増も相まったことにより、早急に物流の改革や進化が求められている現状です。このプロジェクトでは、アフターコロナにおける物流変革を見据えて、ドローンによる配送サービスの運用の課題や収益性を検証し、効果的な運用オペレーションの構築を目指します。
各社の役割分担は、安全管理、ドローン物流モデルのフィージビリティ評価を日本航空が、有人航空管制連携を含めた航空管制プラットフォームの提供をTerra Droneが担い、ウェザーニュースが高精度気象予測情報、気象観測装置の提供、有人ヘリとの連携を行なっていきます。
想定対象エリアは都内湾岸エリアおよび都心の駅周辺、実施期間は8月から2022年3月までとしています。
ドローン配送とは?
ドローン配送とは、ドローンの機体に専用のボックスを装着するなどして空路で輸送を行なうことです。離島や山間部、海岸線が入り組んだ場所など陸路での輸送が困難な場所で活用されるほか、医薬品や輸血用の血液を素早く届けるための方法としても期待されています。また、コロナ禍では人との接触を避けて荷物を運ぶことができる「コンタクトレス配送」がドローンでは可能になることから、より注目を浴びています。
日本やアメリカ、ヨーロッパでは倉庫間の物流網が高度に発達しており、比較的スムーズに配送が実現さでていますが、しかし、倉庫から一般家庭やオフィスなどへの配送は、わずかな距離ながら大きな手間がかかります。この「ラストワンマイル」と呼ばれる物流の末端の効率化は現在大きな課題になっており、日本でも宅急便の値上げが行なわれたり、中国で最もEC購入が増える「独身の日」で物流網がパンクしたりした、というニュースをご覧になった方も多いはずです。ドローン配送はこうした「ラストワンマイル」の効率化に期待が持たれています。
【参考記事】ドローン活用事例:空撮、点検に配送から農業まで、27本の動画でまるわかり
ドローン配送のメリットは?
ドローンを配送に利用するもっともわかりやすい利点は手軽に空輸が行える点です。山、海、湖、河、砂漠、密林など陸路で車や人がしにくい場所でも空からであれば挑戦距離で移動できるため速やかに配送が行なえます。
また、ドローンは自律航行(飛行)をする能力を備えているため、離陸から配送、倉庫などへの帰還を自動化できます。現状、法律の規制などにより完全自動での配送が行なえる場所は限られていますが、将来規制緩和が行なわれればドローンによる自動配送が可能になり物流における人手不足の解消や、非接触での配送が期待できます。
ドローン配送のリスクやデメリット
重量のある物体が空を飛行する以上墜落のリスクを完全にゼロにすることはできません。ドローンの障害物回避能力は急速に進歩しつつありますが、落雷や鳥との衝突、電波のジャミング、射撃や投石などの悪意をもった攻撃までも想定した場合にはドローンが落下するリスクは常に存在しています。そのため、墜落したドローンが人や家財に衝突しダメージを負わせる可能性があることがドローン配送の最大のリスクです。
また、ドローンはモーターや電気回路に浸水してしまうと動作が止まってしまうため雨に極めて弱い機械です。DJIの「Matrice 200/210」のような防滴性を備えた機体も登場してはいますが、一般的なドローンは「雨が降ったら飛べない物」なのです。加えて、強風が吹いた場合も、機体スペック的には飛行が可能であっても安全への配慮から離陸させないケースが大半です。このように、車や列車などの陸路での輸送に比べると悪天候に弱いという点がドローン配送のデメリットと言えます。
編集後記
ドローンを配送に活用すための技術は整いつつあり、実証実験や部分的な実用化は世界各地で進みつつあります。現状、日本で大きく普及していない理由は、おもに規制による面が強いため、法律の改正と規制緩和があれば一気に市場が広がる分野であると言えそうです。