長野県伊那市とKDDIがドローンを使った買い物サービス「ゆうあいマーケット」を、伊那市の中山間集落で本格運用を始めました。自治体が運営の主体となりドローン配送サービスの提供を行うのは国内で初めてのこととなります。
テレビリモコンで商品を注文
「ゆうあいマーケット」の利用者はケーブルテレビのリモコンで商品を注文します。
自律飛行型ドローンが商品を配送し、集落の最寄りの公民館に届けます。利用者は公民館まで商品を取りに行く必要がありますが、公民館まで出向くことが難しい場合はボランティアが自宅まで配達を行います。
商品の代金はケーブルテレビの利用料とともに口座から自動で引き落としされるため、金銭の直接的なやり取りは発生せず手間がかかりません。サービス利用料金はサブスクリプション型の月額1000円で利用ができます。
買い物困難者を支援する
長野県伊那市は山に囲まれた地方都市で、少子高齢化が進みつつあります。物流や交通、買い物などの地域課題を抱えており個人の生活の維持が困難になり得る可能性があることから、伊那市はKDDIと共同でドローンを利活用した物流システムの構築に乗り出しました。
システム構築後は、地元の事業者やボランティア体制などの調整を進めてきた伊那市。2020年6月から7月にかけてサービスのテストと運用を実施し、事業者や利用者のフィードバックを受けて、2020年8月より本格的な運用に至りました。
今回の配送サービスで使用されるドローンは、KDDI株式会社のモバイルネットワークに対応し、目視外による自律飛行や遠隔監視制御が可能なスマートドローンです。最大積載量はおよそ5kgで、約7km離れた地点までのドローン配送が可能だそうです。
このサービスはドローンによる配送だけでなく、地域住民の見守りを行う集落支援員による陸送も実施するとのこと。ドローンといった最新テクノロジーとマンパワーを融合したサービスとなっています。
ドローンによる配送のメリット
日本でも実用化が進むとされているドローン配送サービス。日本はこれから少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少していくと予想されており、あらゆる業種での人手不足や高齢化社会が進むと言われています。
また、昨今の新型コロナウイルスの影響で不要不急の外出自粛が各都道府県で呼びかけられていることから、ドローンによる配送サービスは新たな買い物の形態としても注目を集めています。
ドローン配送のメリットとしては、以下が挙げられます。
・車での宅配が難しい山間部や離島などへも簡単に宅配ができる
・目的地をセットすれば、荷物を自動で届けて自動で帰ってくる
・従来の車などによる宅配と併用できればドライバーの負担軽減が可能
・渋滞が無いため、従来では叶えられなかったスピードで時短配送が可能
日本では測量やインフラ点検、農薬散布などの分野でドローンの導入が進んでいますが、配送の分野でも本格的に実用化するための実証実験が進められていました。
今回の伊那市とKDDIによる「ゆうあいマーケット」は、地域主体の本格的なドローンによる配送サービス、またケーブルテレビによる物流システムとしては、日本で初めての例となります。