ここ数年で、ドローンによる物流についてのニュースを目にする機会が多くなりました。ドローンが人間の代わりに物を輸送してくれる世界を想像すると純粋にワクワクするという方が大多数ではないでしょうか。
ただし、ドローンによる物流にどれだけの意義があるのか、そもそも実際に実現可能であるのか、など疑問は尽きないと思います。そこで今回はAmazonや楽天を代表とするECサイトが普及している側面から、ドローンによる物流・搬送の意義や実現の可能性について解説したいと思います。
もくじ
ECドライバーの現状と課題
スマートフォンの普及で誰もがインターネットを簡単に利用できるようになりました。その流れでECサイトの利用件数も年々増加しています。現在ではECサイトなしでは生活できない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんなECサイトの需要が高まりを見せている一方で、供給サイドのドライバー人口が足りないことが問題となっています。具体的には、総務省によると道路貨物運送業就業者数は2003年以降減少しているものの、概ね180万人超で推移しているとのことです。つまりドライバー数が減少したというよりは需要の急激な増加に供給が追いついていないことが主因であると言えます。
ただし単純にECドライバー不足と言っても課題は大きく以下の2つに分けられます。
①長距離ドライバー不足
②ラストワンマイル問題
次の項目では、それぞれの課題とドローンによって解決が図れるかどうかを考えていきます。
「長距離ドライバー不足」はドローンで解決できるのか?
みなさんがECサイトで何かを購入すると、商品はまず倉庫から配達先の住所付近の運送拠点へと長距離トラック等で配送されます。
この輸送を担当するドライバーは中型免許ないしは大型免許を取得している必要があります。しかし、2007年の道路交通法改正によって、それらの免許の取得難易度が上がったと言われています。実際に、大型ドライバーの数は減少傾向にあるようです。
そこでドローンによって長距離ドライバー不足を解決したいところですが、1日に数100kmの距離を走り、なおかつたくさんの荷物を積んでいる大型トラックの機能をドローンが代替することは現在の技術では難しいと考えられます。
「長距離ドライバー不足」という課題をドローンで解決することは難しそうですが、「ラストワンマイル問題」はどうでしょうか?次は「ラストワンマイル問題」について考えていきます。
「ラストワンマイル問題」はドローンで解決できるのか?
前述のとおり、みなさんがECサイトで何かを購入すると、例外はありますが、長距離ドライバーがみなさんの住所の近くの運送拠点まで商品を運びます。物流業界では、その運送拠点からみなさんの自宅までの距離をワンマイル(約1.6km)と形容して表しています。
ラストワンマイル問題とは、このラストワンマイルの距離を担当するドライバーの供給量不足を指します。
そして、ドローンによる物流はこのラストワンマイル問題の解決において期待ができます。なぜなら、1マイル(約1.6km)程度の距離であればドローンによって運送することは現在の技術で容易に可能ですし、そこまで重量がない荷物であればドローンに積むことも可能だからです。
次の項目では、現状のドローンによる輸送実験の実例、また海外の社会実装の事例について確認します。実際に現在の技術で、ドローンによるラストワンマイルの輸送は可能であるということがわかります。
実験事例と今後の展望
実験の動画は以下の記事でまとめてご覧ください。本記事では簡単な概要のみをご紹介します。
ドローン配送の事例
2018年11月:日本郵便による実験
無人地帯での目視外飛行に成功。9キロメートルを飛行し計画通り約15分で目的地に到着。
参照:日本経済新聞「日本郵便、ドローンで離陸 「ゆうパック」視野」
2019年2月:楽天による実験
無人地帯での目視外飛行に成功。日本郵便に続いて2事例目。約3kmを約10分間で自動飛行した。
参照:日本経済新聞「楽天、ドローンで配送実験 19年度中に定期配送へ」
米 Zipline社の実例
以前の記事でも紹介しましたZipline社ではアフリカ中部のルワンダにてドローンによる血液輸送を既に社会実装しています。最高時速は約128.7kmで、1度の飛行で約160.9km飛行できるようです。また、約1.7kgの物資を積むことも可能であるようです。
ドローン配送 今後の展望
今回紹介した日系企業2社による実験ですが、これは経済産業省による「空の産業革命に向けたロードマップ」に基づいて行われたものです。つまり、このロードマップを読んでおくとこれから先の動向を伺うことができるでしょう。
参照:経済産業省「空の産業革命に向けたロードマップ2019」
ロードマップによると、2020年から2021年は離島や山間部等における荷物配送ビジネスの拡大を目標としているようです。つまり、ドローンによる物流はいわゆる田舎地域から進んでいくと思われます。実際に今回紹介したZiplineもルワンダという途上国からスタートしたユニコーン企業です。
編集後記
ドローンによる物流について、ECサイトの普及の側面から意義と実現可能性について解説しました。
ECサイトの需要の高まりによってドライバー供給量が不足しており、なかでもラストワンマイル問題の解決にドローンが役立つのではないかという結論に至りました。実際にラストワンマイル問題で必要とされる輸送距離そして積載量は現状の技術で十分にクリアしていることが複数の事例からわかりました。
人口減少社会に差し掛かっている日本においてドローンが物流業界の救世主となるのか、今後の動向に注目しましょう。