昨今、空撮や点検、測量などにドローンを活用する流れが拡大しています。ドローンを使用すれば、従来の点検、測量にかかっていた時間や人件費を大幅に削減することができるからです。
しかし、ドローンを飛ばす際には国土交通省から許可や承認を得なければならないケースが多数存在しています。安心安全なドローン飛行のためには、ドローンの飛行ルールを知り、適切な申請をして許可承認を得る必要があります。
適切な申請をせずにドローンを飛ばした場合、法律に基づく処罰を受けることになるため、十分な注意が必要です。
航空法によるドローン規制
まずドローンを飛行する上で一番注視しなければならないのは航空法です。航空法で定められている飛行エリアを無許可で飛ばすなどの違反に対して逮捕者が出た、という事例も数多く報道されております。
ドローンの使用に関しては、法律違反とならないよう飛行エリアの確認や許可手続きを取る必要があります。
適切な許可手続きを終えてドローンを飛行させることは問題ではありませんが、法律やマナーで求められる範囲を超えた飛行によってドローンの健全な利用が阻害されることは、非常に問題です。
本記事では、業務に安心してドローンを活用するために、飛行許可や飛行承認が必要なケースの見極め方や、実際に申請を行って正しく安全に飛行させるための情報をまとめました。
ドローン飛行申請が必要か不要かを見極める
ドローンを利用する際は、まず、以下の5つの法律に照らし合わせて、問題がないか確認をしましょう。
ドローンに関する法律一覧
- 航空法
- 小型無人機等飛行禁止法
- 道路交通法(第七十七条)
- 民法(第二百七条)
- 電波法
ドローンに関する法律と確認のポイント
いきなり、複数の法律を確認しなければならないのかと不安に思われた方も多いかもしれません。
この中で大半のケースに関係があるのは「(1)航空法」です。実際にどのようなケースで法律が関わってくるのかを簡単にまとめましたので、チェックして頂ければと思います。
1.航空法
「ドローン(無人航空機)」とは何か?という基本的なことや、飛ばす「場所」と「方法」についての規制などを定めている法律です。以下の「場所に関する3パターン」と「飛ばし方に関する6パターン」に該当する場合は事前の手続きと申請が必要です。
<航空法に基づく許可が必要な飛行場所>
- 空港周辺
- 150m以上の上空
- 人家の密集地域
<航空法に基づく承認が必要な飛行方法>
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 人や建物と30m未満の距離での飛行
- 催し場所での飛行
- 危険物輸送
- 物件投下の禁止
» 航空法
2.小型無人機等飛行禁止法
国の重要な施設(首相官邸、外国公館、原子力事業所等)の周辺でドローンを利用する場合にかかわってくる法律です。自分がドローンを飛ばす予定の周辺に該当する施設がない場合はこの法律に関連した申請は不要です。
なお、本記事では「小型無人機等飛行禁止法」に基づく申請方法の解説は記載していませんので、手続きが必要になった場合は以下の警察庁のウェブサイトに掲載された手順をご覧ください。
» 対象施設周辺地域において小型無人機等の飛行を行う場合の手続
3.道路交通法
道路内や路側帯、歩道などからドローンを離発着させる場合は道路交通法における「道路において工事若しくは作業をしようとする者」に該当するため「道路使用許可申請書」を管轄の警察署に提出する必要があります。また、車両の通行に影響を及ぼすような低空を飛行する場合も同様の許可が必要です。
» 道路交通法
なお、法律に明記されているわけではありませんが、トラブルを避けるためにもドローンを道路上空で飛行させる場合は管轄の警察署に事前に連絡をすることを強くおすすめします。ドローン飛行時には交通量が多い道路の上空を避ける、第三者の車を無断で追尾して撮影しないなど、安全とプライバシーへの配慮が必要です。
4.民法
民法では「土地所有権の範囲」として、土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ、と定めています。そのため、この空域でドローンを飛ばす場合には、土地の所有者や管理者の許諾を得るようにしましょう。
また、線路を含む鉄道関連施設や神社仏閣、観光地なども私有地であり、これらの場所で無許可の飛行を行なった場合は大きなトラブルに発展する可能性があるため、特に注意が必要です。
なお、私有地に関しては、法律に基づいて行政機関に申請する義務があるというわけではく、トラブルを避けるために土地の権利者に対して事前に話を通しておく必要があるということになります。
» 民法
5.電波法
日本国内で使用される電波を発する機器は「特定無線設備の技術基準適合証明(通称:技適)」を取得することが電波法で義務付けられています。ドローンも一般的に電波を用いて遠隔操縦を行なうため、この法律の規制対象となります。「技適」認証を取得していないドローン日本国内で使用しないようにしましょう。
また、ホビー用途でFPV(1人称視点ゴーグル)などの5GHz帯の電波を利用する際は、オペレーターによる「第四級アマチュア無線技士」以上の資格取得と、使用するドローンに対して「無線局開局」の承認を取得する必要があります。また、趣味ではなく業務目的で5GHz帯などの電波を使用する場合は「第三級陸上特殊無線技士」の資格を取得する必要があります。
条例
日本全国に適応される上記の5つの法律に加えて都道府県や市町村が定める条例によりドローンの飛行が制限、もしくは禁止されている場合があります。地域によってそれぞれ異なるルールが存在するので、個別の状況については地方自治体等の窓口に確認してください。
代表的なドローン規制条例
必要な申請方法は2種類
国土交通省に申請を行なう際の方法は、大きく分けて「個別申請」と「包括申請」の2パターンがあります。さらに、包括申請のなかに「期間包括申請」と「飛行経路包括申請」の2つのバリエーションがあります。それぞれの詳細は以下の通りです。
業務としてドローンを飛ばす場合は、悪天候時などよりリスケジュールが起こることがあるので、クライアントからの要望に臨機応変に応えるためにも柔軟性の高い「包括申請」で手続きをするのがおすすめです。
個別申請
ドローンの飛行日が事前に確定していて、飛行する経路が単一で確定している場合に行なう方法です。包括申請に比べて取得しやすい場合が多いようですが、その分飛行スケジュールなどの柔軟さでは劣ります。
包括申請
「悪天候で予定していたフライトが行えなくなった場合、別の日に素早くドローンを飛ばしたい」という場合は包括申請を行います。空撮や点検、測量などでドローンを利用する場合は包括で申請をする場合が多いようです。
期間包括申請
同じドローンオペレーター(申請者)が、一定期間内に繰り返しフライトする場合に選ぶ申請方法です。なお、包括申請の期間は、最長1年間までとなっています。
飛行経路包括申請
同じドローンオペレーター(申請者)が、複数の場所でフライトを行なう場合に選択する申請方法です。飛行経路包括申請は飛行経路が明確な場合だけでなく、「飛行経路が特定できないが、飛行想定範囲(県全域・市全域など)などがわかる」という場合でも申請可能です。
飛行場所、方法ごとの申請書記載例
また、申請書に記載する内容の例については、国土交通省のウェブサイトにサンプルが掲載されています。人口集中地区の上空飛行や夜間飛行などの場合ごとに、それぞれ申請書の例がありますので、自分の目的にあった内容を確認して、申請書作成の参考にしましょう。
ドローン飛行許可申請を自分でやる方法
この記事では、まず、ドローン飛行に許可や申請が必要なケースを判断する方法を5つの法律と条例に基づいてご紹介しました。その次に、主にドローン飛行の際に必要となる申請の種類を紹介させていただきました。
申請に関する情報や作業はかなりボリュームがあるので、初めての場合は難しく、時間のかかる作業になるかもしれません。
ですが、ドローンの飛行申請を完了させて許可や承認が得られれば、人口集中地区や夜間飛行、目視外飛行などが可能になり、ドローンを活用する幅がグッと広がります。是非、チャレンジしてみてください!
なお、不明な点は国土交通省の「無人航空機ヘルプデスク」まで問い合わせることができます。
0570-783-072
受付時間 平日午前9時30分から午後6時まで