Twitterで約5万2000、Instagramで約2万8000アカウントのフォロワーを持ち、3000を超える「いいね」を獲得する写真を多数公開している人気フォトグラファー別所隆弘(べっしょ たかひろ)さんを招いたセミナーがDJI JAPANのオフィスで開催されました。
もくじ
DJI空撮セミナー会場の様子
セミナー会場は品川にあるDJI JAPANのオフィス。『ビバ! ドローン』で潜入フォトレポート記事をお届けした、その場所です。
今回のテーマは「プロフォトグラファーに聞く空撮セミナー」となっており、ドローンを飛ばして空から写真を撮影したいという人向けの内容。動画ではなくて、写真にフォーカスしたセミナーであるようです。
参加者の皆さんは、30代後半から50代と見られる男性が多く、ざっと数えたところ人数は40人前後。クリエイター然とした見た目の方はむしろ少なく、ワイシャツにスーツ姿のビジネスパーソンという印象の方がたくさん参加していました。
DJI空撮セミナー講師、別所隆弘さんのプロフィール
別所隆弘さんはアメリカ文学研究者として大学に勤務しつつ、おもに風景写真の撮影を行なうプロフェッショナル・フォトグラファーとしても活躍されています。共著『最高の1枚を「撮る・仕上げる」で生み出す 超絶写真術』などの他に、TwitterやInstagramなどへ積極的に作品を投稿し、人気を博しています。
» takahiro_bessho|Instagram
» Takahiro Bessho Photography|公式ウェブサイト
セミナー会場には、別所さんが空撮に使用するドローンDJI『Phantom 4 Pro』が展示されていました。
セミナー会場の脇にあるネットに囲まれたフライトスペースでは『Phantom 4 Pro』の飛行デモが行われ、コントローラーの画面を同時に会場に設置された薄型ディスプレイの大画面へ出力して表示。F値やシャッタースピードISO感度などを飛行中に変更するデモが行われていました。
DJI空撮写真セミナーの詳細
当日のスケジュールは以下の通りでした。
関西弁を交えた軽妙なトークで会場をなごませつつ、ドローン空撮の魅力や撮影の際のエピソードを語る別所さん(写真右)。
ドローン空撮をはじめたきっかけ
ドローン撮影を始めたきっかけについては「写真を撮っていて、不自由を感じるのは林などに目の前が遮られて、その先が見えない時。人間は身長180cmくらいで、脚立に乗っても2mくらい。(森や山などの前では)2Dであると言っても過言ではない存在だから、同じ場所で撮影をすると同じような写真になってしまう。それがドローンを使えば、3Dの存在になって視点が変わり、人と違う写真がとれるようになると思ったから」と語っていました。
ドローン空撮初体験時のエピソード
『Phantom Pro 4』を最初に使った際の感想は「プロペラの音が大きくておどろいたけど、安定してホバリングしているし、左右に動かしても落ちる気配がないから安心だった。ジンバルのおかげで、水平が維持できるのがすごい。僕にはフォトグラファーとして致命的な弱点があって、シャッターを押すときに水平が保てないのだけれど、ドローンを使えば大丈夫」と言って会場の笑いを誘う一幕も。
別所さんがドローンを購入したすぐ後に撮影したという写真は以下のとおり。
お正月にDJIのドローン Phantom 4 Proを買いました。今日はその初飛行。夕焼けを狙ったのに直前で雲に隠れてしまったんですが、ソニーの1インチセンサーを積んだカメラの実力は素晴らしく、これからの撮影が楽しみです。pic.twitter.com/gj3wgSZV7B
— 別所隆弘/Takahiro Bessho (@TakahiroBessho) 2017年1月7日
ドローン空撮時の注意点
「風にあおられてヒヤッとすることはありましたか?」という質問には、自身の撮影環境ではそういった経験はないとしつつ「逆に、手元で見ている映像が安定しすぎていて危険を察知しづらい、ということはあるかもしれません。機体は風にあおられていても、飛行の安定性はシステムが面倒をみてくれるし、画像はジンバルのおかげでユレもしない。なので、周囲の状況に対して人間が注意して敏感にならないといけないかもしれませんね」と機体性能の高さゆえの過信へ注意を促していました。
続けて「では、風を読んで飛ばすと言ったことも……?」と聞かれると「いやー、それはムリですね、僕は『風の谷のナウシカ』ちゃいますんで」との回答も。一方で、「機体の制御に必死になる必要がないと余裕が生まれて太陽の確度とか水面に影響する風の向きとかを見るのに集中できます。フォトグラファーとして本当に集中したいのはここ。自分がいる場所は風が吹いてるけど、向こうに飛べば無風だからリフレクション(水に反射する景色)が撮れる! と気づけて、実際にそこにスーッと機体を持っていけるというのはうれしい」というまじめなコメントも。
DJI Phantom Pro 4を選んだ理由
『Phantom 4 Pro』を選んだ理由についての質問には「ドローンに搭載されるセンサーサイズが十分に大きくなったから、購入を決めました。プロでやるなら、フルサイズがAPS-Cのモデルを選びたい。それより小さいセンサーサイズだと階調表現がきれいにできるか、シャドーを引き上げたらきれいに色がでるか、と不安になります。でも、1インチ以上のサイズのセンサーなら勝負ができる」と語りました。
このように、別所さんは今回セミナー&トークショーで度々『Phantom 4 Pro』が1インチのセンサーを搭載している点に言及しており、撮像素子の大きさがドローンを購入する大きなきっかけとなったようです。
一般的なデジタルカメラでも、空を飛ぶドローンに搭載されるカメラも、レンズを通して撮像素子が捉えた光が「写真(画像)」になるという構造は同じで、この撮像素子のサイズが大きければ大きいほどノイズが少なく階調表現に優れる写真が撮りやすいという原則があります。そのため、空や大地、湖、海、朝日、夕日など、明るい場所と暗い場所が1枚の写真に混在するような状況を写真におさめることが多い風景撮影をするフォトグラファーは、大きめのセンサーを好む傾向が強いようです。
以下の作例でも、ハイライトが白飛びしすぎること無く、同時に暗所も黒つぶれしていない様子がわかります。この画像は撮影後に編集されたものだと思われますが、元画像が十分にデータを保持できていない場合に起こる補正部分の色抜けやノイズの増加などが少なく、センサーの優秀さがよくわかります。
若草山展望台上空からの奈良の町並み。「天使のはしご」と呼ばれる薄明光線が雲間からくっきり現れていて、それが東大寺や興福寺、そして町の情景を立体的に写しています。ドローンならではの美しさです。#DJI #Phantom4pro #drone #奈良 #光芒 pic.twitter.com/UVU5RqBosE
— 別所隆弘/Takahiro Bessho (@TakahiroBessho) 2017年2月18日
別所流ドローン空撮術
ドローンを飛ばす際の注意点については「Phantomは防水ではないので、雨や雪が入ると落ちる可能性があります。だから、天候は要注意。でも、悩ましいのは、ピーカン(真っ青な空)だとあまりおもしろい写真にならない。おすすめは雨や雪が上がった直後で、悪天候が通り過ぎた後はシャッターチャンスです。最近は、スマホのアプリで雨雲の様子などがほぼリアルタイムでわかるので、そういったものを活用して撮影をしています」と安全を確保しつつドローンで写真を撮るための豆知識を披露。
さらに「人口集中地区(DID)や空港の近くは飛ばさない、私有地の近くも勝手に入って撮らない、というのは気をつけています。あと、県の条例も見落としがちなポイントとして、例えば大阪府は公園でのドローン空撮が禁止されているけど、奈良は大丈夫といった違いがあるので気をつけましょう」と注意を呼びかけていました。
フォトグラファーが空撮ドローンに期待すること
最後に今後のドローンの進化に期待する点を聞かれると「センサーサイズがもっと大きくなって、ジンバルの性能もより良くなってほしい。そうしたら、露光時間が伸ばせるので夜景の空撮を撮りたいです。もちろん、夜間飛行の申請をして」と回答。それにはDJIの担当者も「別所さんのご期待どおりの物が作れるかはわかりませんが、がんばります」と答えていました。
DJIからの補足
トークショーの後にはDJI JAPANから「空撮における操縦者の心得」の紹介も。1人のミスや1件の事故がドローン業界を象徴するニュースとして扱われかねない状況の中で、安全飛行に対する啓蒙活動に取り組む姿勢がうかがえました。
DJIドローン空撮セミナーのまとめ
DJI流? ユニーク過ぎる記念撮影スタイル
イベント終了後の記念撮影は、あえてドローンのカメラを使用。空撮ではなく、ドローンを手持ちで掲げる謎のスタイルでパチリ。
DJI ドローン空撮セミナーのおみやげ
セミナー参加者へのおみやげとして渡されたファイルには、同社製品のカタログや安全飛行のためのガイドなどに混じってこんなパッケージが。
中身はドローンの利用シーンを撮影したオシャレなポストカードでした。
このようなイベントについての告知はDJI JAPANのフェイスブックページで行われているので、気になる方は、ぜひ、チェックしてみてください。