ドローン測量は、ドローンによる空撮および空撮した映像を解析するソフトの導入で、手作業で一週間程度必要だった作業が1日〜3日程度と、大幅に短縮できるようになりました。「人手が不足しがちなのでドローンで省力化を進めたい」「UAVなどの新技術を導入して将来に向けた投資をしたい」という方に向けてドローン測量の基礎情報と測量の際に必要な解析ソフトをまとめて、ご紹介していきます。
もくじ
3行でわかりやすく解説! ドローン測量とは?
- ドローンで空から地面の様子をデータ化します
- 専用ソフトでデータを加工して、図面や3Dモデルの作成に利用します
- 地上で測量するよりも早く、セスナで航空測量をするより安いです
ドローン測量で得られるもの
ここではまず、ドローン測量を行なった結果得られるデータ、成果についてご紹介するとともに、ドローン測量のメリットとデメリットをご紹介します。ドローン(UAV)の導入を検討する際のヒントにしていただければ幸いです。
3次元点群データ
点群データとは、言い換えるなら「ドローンで空中から取得したXYZ軸の情報」のことです。ドローンが気圧計などから取得する高度情報とGPSやGLONASSの人工衛星から取得する位置情報を光学カメラやレーザー測距装置で捉えたデータと組み合わせることで、位置情報をもつ「点の群れ」がデータとしてできあがります。このデータを専用ソフトで加工することで、地点Aから特定の地点Bまでの距離の計測や盛土の体積算出、3Dモデル作成、図面作成、出来形管理などが行えます。
オルソ画像
ドローンで空から撮影した複数枚の写真を組み合わせて、傾きや歪みを配して正確な位置と大きさに表示されるように補正した「写真」のことをオルソ画像と呼びます。直接的な意味での「測量」とは異なるかもしれませんが、ドローンによる点群データの取得とあわせて撮影されることがある画像なので、こちらで紹介します。
オルソ画像は、写真上の像の位置ズレをなくし空中写真を地図と同じく、真上から見たような傾きのない、正しい大きさと位置に表示される画像に変換(以下、「正射変換」という)したものです。オルソ画像は、写された像の形状が正しく、位置も正しく配置されているため、地理情報システム(GIS)などにおいて、画像上で位置、面積及び距離などを正確に計測することが可能で、地図データなどと重ね合わせて利用することができる地理空間情報です。
オルソ画像について|国土地理院
このような3次元点群データやオルソ画像を取得することで、現地の様子を正確に把握することができ、工事現場などにおける判断の迅速化や施工の効率化を実現し、工期短縮とコスト削減そして安全強化を目指すことがドローン測量の狙いです。
ドローン測量の手順
ドローンを用いた測量と一口に言ってもそれが公共測量なのかより簡易なものなのか、どれほどの精度が求められるものなのか、どのような機材を使用するのかによって必要な人員も手順も異なります。本稿では全ての事例を網羅することはできないので、以下に一例として、ドローンによる写真測量を行なう場合の手順を国土地理院の「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」からご紹介します。
ドローン測量が役立つ業種、活躍する場面
ドローン測量の導入が進む業種、引き合いのある業種としては以下の事例があります。
- 建設業者・コンサルタント
- 産業廃棄物業者
- 鉱山管理業者
また、砂利や土砂、パルプなどを管理する必要がある現場などでの活用も注目されています。
ドローン測量のメリット
ドローン測量は旧来の測量方法に対してどのような点で優れているのでしょうか? この項ではドローン測量を導入した場合に得られるメリットを「地上測量」と「旧来の航空測量」との比較でご紹介します。
地上測量とドローン測量を比較した際のメリット
①素早く広範囲をカバーできる
地上での測量と比較した場合、ドローン測量は圧倒的に素早く計測が行なえます。ドローン測量でも地上測量でも土地の状況や必要なデータの精度などによってかかる時間は異なりますが、ひとつの目安として以下の例をご覧ください。
<2ヘクタールの土地を地上からトータルステーションで測量した場合>
平坦な場所で2、3日。起伏が激しい地形では1週間程度
<2ヘクタールの土地を空中からドローンで写真測量した場合>
実飛行時間1時間程度、準備と撤収込みで半日程度。
ドローン測量における現地作業は地上測量と比べて最短1/6程度まで短縮可能です。別途、PCによるデータ解析は必要になりますが、それを含めても大幅なスピードアップが期待できます。
②人が入れない場所にもドローンは行ける
地上から人や車両で機材を持ち込むことが難しい、手間がかかるといった地形や崖、土砂崩れの現場など人が近づくのに危険を伴う場所でもドローンであれば素早く安全に測量が行なえます。
③3Dモデル作成が容易
写真データから点群データを作成することができます。
旧来の航空測量とドローン測量を比較した際のメリット
①価格が安い
セスナなどの航空機を用いて写真測量やレーザー測量を行なう場合と比較した場合、ドローン測量の方が低い価格で実施することができます。こちらも条件によって価格は大きく異なりますが、一例としてセスナを測量目的で飛ばす場合は100万円程度の予算が必要になるところ、ドローンであれば十数万円の予算で実施できる場合があります。
②点群データの密度が高い
セスナに比べてドローンのほうが低空(100m程度)を飛行するため、より密に点群データを取得できます。そのため、成果物となる3Dデータなどの精度を高めることが可能になります。
ドローン測量のデメリット
ドローン測量のメリットはヘクタール単位の土地を素早く測量できることにあります。そのため、数十平方メートル程度の凹凸の無い土地を測量する場合、地上からの測量に比べ割高になります。
また、航空測量の場合はドローンよりも早く広い土地を測量できるため、数十〜数百ヘクタール単位の土地を一気に測量したい場合はドローンだとバッテリー交換のために複数回の離着陸が必要になることやセスナほど速く飛べないことから計測に時間がかかってしまいます。ただし、近年では固定翼のドローンも登場してきているため、ドローンによる写真測量はこれまでよりも広い範囲を素早く撮影することが可能になりつつあります。
これらはデメリットというより、測量を行なう場所の広さによって適切な方法が違うと捉えるのが良いかもしれません。
ドローン測量のデータ画像解析用ソフトウェア
Pix4D Mapper(ピックスフォーディー・マッパー)
航空測量と地理空間情報技術のフロントランナーとして日本国内で不動の地位をきづいている国際航業が日本代理店の1つとして販売を行なっているソフトウェアです。測量を主眼に置いて開発されたソフトウェアのため、点群データから高い精度で距離、面積、体積を算出したり、3Dモデルを作成することができるハイエンドソフトウェアです。
Ultimate Pix4D tutorial 3D mapping – YouTube
» Pix4Dmapper の価格をドローンデパートメントに問い合わせる
PhotoScan(フォトスキャン)
写真データから3Dモデルを制作することを得意とするソフトウェアですが、写真測量に応用することが可能です。
DJI GS PRO – PhotoScan /写真測量ワークフロー全体 – YouTube
» PhotoScan の価格をドローンデパートメントに問い合わせる
Terra Mapper(テラマッパー)
クラウド版は無料、デスクトップ版でも40万円台から導入が可能なコストパフォーマンスの高さが魅力のドローン測量用ソフトウェアです。
TERRA MAPPER日本語版 – YouTube
» Terra Mapper の価格をドローンデパートメントに問い合わせる
ドローン写真測量 エントリー向け機体例
PHANTOM 4 PRO
- 公称重量:約1.38kg
- カメラ性能:1インチ(2,000万画素)センサー搭載、MP4・MOV:4096×2160(60p)、JPEG・DNG (RAW):5472×3648
- 参考価格:204,000円(税込)
ドローン写真測量 ミドルクラス向け機体例
Inspire 2
- 公称重量:約3.44kg ※ジンバル、カメラ別
- カメラ性能:4/3センサー(2,080万画素)搭載、PEG・DNG (RAW):5280×3956、MP4・MOV:4096×2160(59.9p) ※ZENMUSE X5S搭載時
- 参考価格:389,000円(税込)
ドローン写真測量 ハイエンド構成例
より正確なデータを得るためにより画素数が高いカメラを大型ドローンに搭載した場合の例としては『Matrice 600 Pro』と『RONIN-MX』そして、『α7R III』を組み合わせた200万円オーバーの構成が考えられます。
編集後記
従来の測量は「人の手で行うか」「航空機を活用するか」の二択のみでした。人の手を使えば時間がかかり、航空機を活用すればコストがかかるという側面がありましたが、ドローンを測量に活用することで効率良く低コストな測量が実現したのです。ドローンは測量分野において人手不足や高いコストがかかるという問題を解消するだけで無く、精度や品質、安全性の向上という面でも活躍しています。今はまだ導入が限定的ですが、今後さらに需要が高まり普及する可能性が高く、今後の展開に要注目です。